桜とは?
日本人に最も馴染みの深い、新年度を花やかに彩る春の花の代名詞
DATA
学名は「Prunus(またはCerasus)」、英名は「Cherry Blossom」または日本文化の影響から「Sakura」とも。
バラ科スモモ属(またはサクラ属)サクラ亜属の落葉高木または低木の総称。
開花時期は日本各地で多少異なるが、関東以西では4月の新年度を挟んだ3月下~4月半ば頃
品種別では1月の沖縄のカンヒザクラからはじまり、カンザクラが2月頃、ヤマザクラが3月下旬、ソメイヨシノが4月上旬、ヤエザクラが4月中旬くらいに見頃を迎え、カスミザクラは5月上旬くらいまで花を咲かす。最も遅い北海道では7月頃まで咲く場合も。
ソメイヨシノなど葉に先駆けて花が咲く品種が多い、花の色は淡紅色から濃紅色または白色で桜色とも呼ばれる。
花びらが5枚のものを「一重咲き」、10枚までを「半八重咲き」、10枚以上を「八重咲き」、60枚以上ともいわれる細い花のものを「菊咲き」、花びらが二重構造のものを「段咲き」と呼ぶ。
原産地はヒマラヤ近郊と考えられており、日本や中国のほかヨーロッパ・西シベリア・米国・カナダなど、主に北半球の温帯に広範囲に分布。
高さは10~25m、大きいものでは30mのものも。
名前の由来
「サクラ」の名は「古事記」に登場する女神「木之花咲耶姫(此花咲耶姫)(このはなさくやひめ)」の「さくや」の転訛といわれている。神代に富士山の頂から桜の花の種をまいて花を咲かせた。
他に「咲く」に複数を意味する「ら」を加えたもので元々は花の密生する植物全体を指した言葉であるとか、春に里にやってくる稲(さ)の神が憑依する座(くら)から(この点桜には穀物の神が宿ると考えられていたため農業では大切にされ、「田植え桜」や「種まき桜」などの木があるように農業をはじめる重要な指標とされていた)など、諸説あり。
学名の「Prunus(プラナス)」はラテン語で「plum(すもも)」。
漢字名の「桜(櫻)」は元々ユスラウメを意味していた文字の転用、ちなみに木へんのない「嬰」は「首飾りをつけた女性、もしくは首飾りそのもの」を意味している。
歴史
平安時代まで
日本では少なくとも数百万年前から自生しているとされ、約500万年前から約258万年前の鮮新世(せんしんせい)の地層とされる鳥取県の三朝(みささ)層群からムカシヤマザクラの葉の化石が発見されている。
奈良時代から植栽され、古くから和歌の題材として「万葉集」でも44首ほど詠まれているが、中国文化の影響が強かった奈良時代には梅が好まれ、単に「花」というと梅を指していた(梅は万葉集では118首詠まれている)。
平安時代に入り国風文化が育ちはじめると桜の人気が高まり、単に「花」といえば桜を指すようになり、春の花の中でも特別な位置を占めるようになった。小野小町が百人一首で「花の色は 移りにけりないたづらに 我が身世にふる ながめせし間に」、また西行法師が「願はくは 花の下にて春死なん その如月の望月のころ」と詠むなど、多くの歌の中に詠まれている。
戦国・江戸時代
戦国時代には天下人となった豊臣秀吉が最晩年の1598年(慶長3年)に醍醐寺に700本の桜を植えて「醍醐の花見」を盛大に催したことは有名。
河川の整備が進められた江戸時代には、護岸と景観維持の目的で柳や桜が多く植えられたほか、園芸品種の開発も大いに進み、ソメイヨシノを筆頭に江戸末期までに300を超える品種が生み出された。
現代
現在も卒業、入学、入社シーズンと重なることから、新年度の節目を飾る花として広く認知されている。
公式には日本国の国花ではないものの、菊とともに事実上の国花の一つであるかのように扱われ、また1967年(昭和42年)からは百円硬貨の表面は桜のデザインになっている。
桜を題材にした有名な歌としては幕末頃に箏の手ほどきとして作られたという日本古謡「さくらさくら」や春のうららの隅田川の歌詞ではじまる滝廉太郎の「花」などが有名。
近年は桜を題材にしたJ-POPの曲も多く発表され、桜ソングと呼ばれて人気を博している。
海外
しばしば日本と外国との友好親善のために桜が贈呈されることがあり、1912年(明治45年)に日米友好のために東京市長の尾崎行雄が寄贈したアメリカ合衆国の首都ワシントンのポトマック河畔の桜や、東西ドイツ統一後の1990年代にテレビ朝日系列の呼びかけで「ベルリンの壁」の跡地に植えられた約9千本の桜などはよく知られている。
利用・用途
観賞用
花は日本人には最も馴染み深く、他の植物に比べて特別な地位にあるといえ、公園や学校、寺社、道路や河川敷などに植えられたり庭木として用いられる。街路樹としてはイチョウに次いで多く49万本といわれている。
日本全国各地に桜の名所があり、桜の下で行われる花見での宴会は春の風物詩であるほか、道や線路・河川などに沿って植えられた桜並木は「桜のトンネル」と呼ばれ人気を集めている。他にも有名な一本桜も数多く存在する。
名所の中にはソメイヨシノに比べて開花期間が長い八重桜を混植し長い期間楽しめるようにしている所も多い。
神社や寺、自治体などの中には見頃の時期に合わせて「桜祭り」を開いたり、桜のライトアップを開催し夜桜を楽しめるようにしている所も。
秋は紅葉も美しい。
食用
6~7月に実をつける「実桜(みざくら)」の果実は「サクランボ(チェリー)」と呼ばれ、世界中で広く食用とされる。ただし日本で普通に見られる桜の実はそれよりも小さく固い。
食用の品種は、「甘果桜桃(セイヨウミザクラ・学名 Prunus Avium)」「酸果桜桃(スミノミザクラ・学名 Prunus Cerasus)」「中国桜桃(シナノミザクラ・学名 Prunus Pseudocerasus)」の3系統で、日本で栽培されているものの多くはヨーロッパの甘果桜桃。
品種は明治時代に山形県東根市の佐藤栄助が品種改良した人気ブランドの佐藤錦の他、紅秀峰、豊錦、ナポレオン、アメリカンチェリーなどがよく知られている。
日本での生産量は佐藤錦で知られる山形県が全体の7割以上で圧倒的に多い。
また花や葉は塩漬けにして食用(桜湯・桜餅など)に用いられる。
花びらは主に八重桜、葉はオオシマザクラのものが使われ、また桜湯は婚礼やお見合いなどお祝い事の席で振る舞われることが多い。
木材
木の幹は淡い赤味を帯びた褐色で、材木として家具・器具・建築・版木など様々な用途に用いられる。
また独特の強い香りを持ち、チップは燻製材(スモークチップ)として利用されている。
その他
樹皮は細工物(樺細工)や版木、染色などに用いられるほか、「桜皮(おうひ)」と呼ばれる生薬になり、鎮咳・去痰の作用を持つ。
桜の分類(サクラ節)
「ヤマザクラ(山桜)」
学名は「Cerasus Jamasakura(Prunus Jamasakura)」、「シロヤマザクラ(白山桜)」の別名。
日本の野生の桜の代表的な種類で、山桜を原種として品種改良された品種も多い。
古くから詩や歌に詠まれ親しまれてきた桜で、奈良の桜の名所・吉野山の桜もこの品種が中心。
変種が多く開花時期や花の形なども様々。
主に本州中部以南に自生。
エドヒガンとともに寿命で知られ、各地に巨木・名木が点在する。
花が咲くのと葉が出てくるのがほぼ同時なのが大きな特徴、葉は開花時は茶色で5月頃には通常の緑色に変わる。
ヤマザクラ群の品種として「ヤマザクラ(山桜)」のほかに「オオヤマザクラ(大山桜)(ベニヤマザクラ・エゾヤマザクラ)」「カスミザクラ(霞桜)(ケヤマザクラ)」「オオシマザクラ(大島桜)」が知られている。
「エドヒガン(江戸彼岸)」
学名は「Cerasus spachiana Lavalee ex H.Otto var. spachiana forma ascendens (Makino) H.Ohba, 1992」本州・四国・九州と広く自生。
日本の野生の桜の一つで、ソメイヨシノなどこの種をもとに品種改良された品種も多い。
早咲きで知られ、他の品種に比べると1週間~10日ほど早い。
葉に先立って花を咲かせ、花びらが5枚で一重、花の色は薄紅色から白で、萼(がく)の付け根が丸く膨らんでいるのが大きな特徴。
ヤマザクラとともに寿命で知られ、各地に巨木・名木が点在する。
枝が下垂するものは「シダレザクラ(枝垂桜)」と呼ばれる。
名前の由来は春の彼岸頃(3月下旬)に花を咲かせることから。
エドヒガン群の品種として「エドヒガン(江戸彼岸)」のほかに野生種では「モチヅキザクラ(望月桜)」、園芸品種としては「シダレザクラ(枝垂桜)」「ベニシダレザクラ(紅枝垂桜)」「ソメイヨシノ(染井吉野)」などが知られている。
「チョウジザクラ(丁字桜)」
学名は「Prunus apetara Fr.et Sav.」、「メジロザクラ」の別名。
日本の野生の桜の一つで、観賞用に植えられることは少ない。
東北地方や関東地方、中部地方の太平洋側の主に山地に分布。
名前の由来は花びが小さくがく筒が長いため、花を横から見ると「丁」の字に見える所から。
「マメザクラ(豆桜)」
学名は「Prunus incisa Thunb. ex Murray」。
日本の野生の桜の一つで、耐寒性が強く亜高山気候の場所でも育つ。
富士山や箱根周辺に自生することから「フジザクラ」「ハコネザクラ」の別名を持つ。
名前の通り花は1~2cmと小さく、また樹高も低い。
花を下に向けて咲かせるのが特徴。
マメザクラ群の品種として「マメザクラ(豆桜)」のほかに本州中部以北の亜高山帯に分布する「タカネザクラ(高嶺桜)(ミネザクラ(峰桜))」などがある。
「カンヒザクラ(寒緋桜)」
学名は「Cerasus cerasoides (D.Don) S.Ya.Sokolov var. campanulata (Maxim.) X.R.Wang et C.B.Shang, 1998」、「タイワンザクラ(台湾桜)」などの別名あり。
野生の桜の一つで中国南部から台湾にかけて分布、日本では沖縄や鹿児島県の奄美地方で自生し、沖縄で桜といえばこの品種。
1~3月初頭にかけて咲き、旧暦の正月あたりに咲くことから「ガンジツザクラ(元日桜)」とも。
花の形は釣鐘形で下向きに咲くのが特徴、色は濃紅色。
名前は「緋寒桜」の別名もあるが、「彼岸桜」との混同を避けるために逆になった。
ヒカンザクラ群の品種として「カンヒザクラ(寒緋桜)」のほかに「カンザクラ(寒桜)」「オカメザクラ(阿亀桜)」、他の桜に先駆けて咲くことで有名な「カワヅザクラ(河津桜)」などがある。
「サトザクラ(里桜)」
雑種からなる桜の園芸品種の総称で、観賞用に人の手により品種改良されてできた園芸品種をまとめてこう呼ぶ。
200以上の品種があるといわれている。
開花時期は4月中旬から下旬とやや遅く、葉と同時または葉が開いた後に咲くものが多く、観賞用に改良された経緯から見栄えの良い八重咲きが多いのも大きな特徴。
オオシマザクラ(大島桜)を基にして改良されたものが多い。
名前はヤマザクラ(山桜)に対し人里近い所で品種改良されたことから。
有名な品種としては東京の荒川堤から全国に広まったという里桜の代表品種である「関山(カンザン)」、仁和寺で有名な「御室有明(オムロアリアケ)」、千本ゑんま堂などにある大輪の「普賢象(フゲンゾウ)」、常照皇寺で知られる美しい枝垂れの「九重(ココノエ)」、気品ある美しさから絶世の美女の名がつけられた「楊貴妃(ヨウキヒ)」、花の中心から葉化した雌しべが1本だけ出ているのが特徴の「一葉(イチヨウ)」、後水尾天皇があまりの美しさに御車を引き返させたという「御車返し(ミクルマガエシ)」、墨染寺で知られる薄墨色の「墨染(スミゾメ)」、花が緑色の「御衣黄(ギョイコウ)」、花が黄色い「鬱金(ウコン)」など。
桜の分類(ミヤマザクラ節)
ミヤマザクラ(深山桜)
学名は「Prunus maximowiczii Rupr.」。
開花時期は5月下旬頃とかなり遅い。
花の咲き方も他の桜とは違い、長く伸びた花軸に複数の花を間隔をあけて咲かせる総状花序。
涼しい場所を好み北海道に多く、本州や九州などでは亜高山帯に自生。
名前は深い山に多く見られることから。
桜の分類(ミサクラ節)
セイヨウミザクラ(西洋実桜)
学名は「Prunus Avium」、英名は「Wild Cherry」。
ヨーロッパ、北西アフリカ、西アジアなどに自生するが、日本には自生しない。
果実は「サクランボ」または「オウトウ(桜桃)」と呼ばれ食用。初夏の味覚として人気が高い。
国内で最も多く生産されている「佐藤錦(さとうにしき)」やヨーロッパ各国で栽培されている「ナポレオン」、アメリカ原産の「高砂(たかさご)」などの品種が有名。
桜の分類(ロボペタルム節)
シナミザクラ(支那実桜)
学名は「Prunus pseudo-cerasus Lindl.」、「カラミザクラ(唐実桜)」の別名。
名前どおり中国原産で、日本には自生しない。
果実は食用になる。
代表的な品種
ヤマザクラ(山桜)やオオシマザクラ(大島桜)、エドヒガン(江戸彼岸)などの11種の野生種があるほか、古くより多くの園芸品種も生み出され、現在400とも600種ともいわれる品種があるといわれる、このうち最も多いのは江戸末期に出現したソメイヨシノ(染井吉野)で、全国の桜の名所の8割を占める。
花びらの数や色、花のつけ方などで違いがある。
「ソメイヨシノ(染井吉野)」
学名は「Prunus x Yedoensis」。
オオシマザクラとエドヒガンの雑種(交配種)。
日本の桜では現在最も一般的で、全国の桜の名所の8割を占めるともわれる。
花色は薄桃色で、株ごとのばらつきが少なく一斉に咲き、満開からおよそ1週間程度で花が散る。
沖縄と北海道の道南を除く地域以外の日本全国に広く分布。
江戸末期に江戸の上野に近い染井村(現在の豊島区駒込)で植栽がはじめられ、当初は桜の名所として有名な奈良の吉野山にちなんで「吉野桜」と呼ばれていたが、奈良吉野の山桜との混同を避けるため明治初期に博物学者の藤野寄命により生誕の地となった染井の名前を加えて「染井吉野」と命名された。
ソメイヨシノは先に花が咲き後から葉が開くため見栄えが良く、また花の大きさもやや大きめで見た目も豪華、また成長も早いことから、明治時代に入ると全国の公園や学校、道路沿いなどに植えられて急速に広まった。
「シダレザクラ(枝垂桜)」
学名は「Cerasus Spachiana」、「イトザクラ(糸桜)」の別名あり。
枝が枝垂れる桜の総称で、エドヒガン(江戸彼岸)の変種が多い。
開花時期は3月下~4月上旬にかけてで、ソメイヨシノより約1週間ほど早い。
花の色は白、ピンクまたは濃いピンク、小輪の一重咲きだが八重咲きのものも。
ヤエベニシダレ(八重紅枝垂)やベニシダレ(紅枝垂)などの園芸品種が有名。
京都府の府花に指定されている。
「ヤエザクラ(八重桜)」
八重咲きになる桜の総称で、特定の品種を指すものではないが、園芸品種として改良された経緯からサトザクラに多い。
花びらの枚数が多く、開花時期がヤマザクラやソメイヨシノに比べて1週間から2週間遅いのが特徴。
代表的なものとしてはサトザクラの「カンザン(関山)」や「フゲンゾウ(普賢象)」、エドヒガンの「ヤエベニシダレ(八重紅枝垂)」などがよく知られている。
「オオシマザクラ(大島桜)」
学名は「Prunus Lannesiana var. speciosa」。
白色の花が特徴。
伊豆諸島や伊豆半島南部などの南部のやや暖かい地域に自生する固有種で、ソメイヨシノの片親でもある。
葉は塩漬けにして桜餅(さくらもち)に使用されるほか、木材は以前は燃料として広く利用されていたため「タキギザクラ」の別名を持つ。
「カワヅザクラ(河津桜)」
静岡県賀茂郡河津町で見られる早咲きの桜として知られる品種。カンヒザクラ(寒緋桜)とオオシマザクラ(大島桜)の自然交配。
毎年2月上~3月上旬まで1ヶ月ほど咲き続け、花は大きくピンク色。
「シキザクラ(四季桜)」
学名は「Prunus x Subhirtella cv.Semperflorens」。
バラ科サクラ属の落葉小高木でマメザクラとエドヒガンの種間交雑種で、江戸時代から栽培されている園芸品種。
晩秋の10月頃から咲き始め4月に盛りとなる所から「十月桜」とも、花の色は淡紅または白色で、花は小さめで一重または八重咲き。
「フユザクラ(冬桜)」とともに秋に咲く桜の代表格。
よく似た植物
「シバザクラ(芝桜)」
学名は「Phlox subulata」で、「ハナツメクサ(花詰草・花爪草)」の別名。
ハナシノブ科の多年草でフロックスの一種。
4~5月にかけて直径1.5cmほどの桜に似た小さな花を咲かせる、花の色は赤、桃、白、紫などで色鮮やか。
北アメリカが原産。
名前の由来は桜に似た花を咲かせ、匍匐性が強く芝生のように地面を覆って育つことから。
そのため花壇の縁取りやグラウンドカバーなどによく用いられている。
豆知識
桜前線と開花予想
桜の開花予想は1951年(昭和26年)に気象庁が関東地方を対象に行なったのがはじまりで、2010年(平成22年)からは民間の気象会社が独自の開花予想を行っている。
開花宣言は気象庁が各地に定めた標本木を元に職員の目視による観測で行い、蕾(つぼみ)が5輪から6輪ほころびると「開花」、全体の80%以上が開くと「満開」と発表される。
開花具合によって咲き始め、三分咲き、五分咲き、七分咲き、満開、散り始め、葉桜など詳しく報道される。
開花時期の目安は1日の平均気温がおよそ10度を超えたあたりで、その年の気候により前後はあるものの、開花から約1週間ほどで満開となり、満開から数日で散り始めとなる。
狂い咲き
秋から冬にかけて花を咲かせる品種(ジュウガツザクラやフユザクラ)とは別に、秋などの季節外れの時期に突然花を咲かせる現象。
桜は冬の低温に備えて葉から休眠ホルモンを出し翌年の春まで咲かないようにしているが、虫による食害や台風などで葉がなくなると休眠ホルモンが不足し、秋でも寒い日が数日続きその後暖かくなり開花の条件を満たすと花を咲かせてしまうのだという。
桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿
桜の傷口が痛みやすく腐りやすい性質を表したことわざの一つ。昔は剪定も難しかったという。
台風や人間の手などで枝を折られたりすると傷口から腐り枯れてしまうこともある。
左近の桜・右近の橘(さこんのさくら・うこんのたちばな)
平安宮内裏の紫宸殿(南殿)前庭に植えられている桜と橘のこと。
紫宸殿から前庭の方を見て左に桜、右に橘があるので注意(京都市の右京区・左京区と同じ理屈)。
左近・右近はそれぞれ左近衛府・右近衛府の略称で、殿上で儀式があると左近は紫宸殿の東方に,右近は西方に陣を敷き、その陣頭付近に植えられていたことからこの名がついた。
桜の方は元々は梅の木で794年(延暦13年)の桓武天皇の平安京遷都のときに植えられたが、承和年間(834-847年)に枯死、桜好きだったという仁明天皇のときに梅の代わりに桜が植えられたという。
現在の京都御所にも古式に則って再建されたものが伝わるほか、桓武天皇を祭神とする平安神宮や明治天皇が創建した白峯神宮にも同様に左近の桜・右近の橘がある。
また雛祭りでひな壇に並べられることも。
日本三大桜・五大桜・三大夜桜・三大名所
「日本三大桜」は三春滝桜(福島)、山高神代桜(山梨)、根尾谷淡墨桜(岐阜)の3つで、「日本五大桜は」これに石戸蒲桜(埼玉)、狩宿の下馬桜(静岡)を加えた5つ。
「三大夜桜」は弘前公園(青森)、上野恩賜公園(東京)、高田公園(新潟)。
「三大名所」は弘前公園(青森)、高遠城址公園(長野)、吉野山(奈良)。
これらの桜の他にも樹齢が1800年とも2000年といわれる山梨県北杜市の内神代桜など、長寿の桜は多い。
日本さくら名所100選
1990年(平成2年)に公益財団法人日本さくらの会の創立25周年記念し選定された。
各都道府県から最低1か所は選ばれており、京都府からは京都市の嵐山、仁和寺の御室桜、醍醐寺、そして笠置町の笠置山自然公園の4つが選ばれている。
さくらの日
3月27日。財団法人日本さくらの会により1992年(平成4年)に定められた。