京都府綴喜郡井手町井手東垣内、京都府南部の井手町の上井手地区の東、玉川を挟んで南の山吹山と相対する井出山(大山)の中腹に鎮座する玉津岡神社の南隣にある曹洞宗寺院。
山号は玉峰山、本尊は地蔵菩薩で、「城南西国三十三所霊場」の27番札所で、「南山城三十三所観音霊場」の第26番札所。
1883年(明治16年)の「綴喜郡寺院明細帳」によれば、その歴史は古く白鳳年間(673-710頃)に井手左大臣・橘諸兄(たちばなのもろえ 684-757)によって華厳宗の寺院として草創されたと伝わり、往古盛衰を繰り返した後、江戸初期の1628年(寛永5年)に関東天王院・至心考察が当院の本寺である千葉県東長寺の物外麟應を開山として勧請し、曹洞宗に属する禅宗寺院として再興し今日に至っています。
また井手町の産土神である玉津岡神社と隣接しており、同社の神宮寺であったとも伝えられています。
現在の建物は1856年(安政3年)に当院の18世・寶山俊棟によって中興され、また1995年(平成7年)に再中興されたもので、本尊の地蔵菩薩のほか、文殊菩薩および千手観世音菩薩を所蔵しているといい、このうち1684年(貞享元年)の「雍州府志」によると、千手観世音菩薩は橘諸兄の持仏であったと伝えられています。
境内は井手の里を一望できる高台にあることから、眼下には山城の平野が広がるなど眺望も抜群ですが、中でも1987年(昭和62年)4月15日に「京都府指定天然記念物」に指定されている「しだれ桜」とのコラボレーションは抜群です。
この桜は江戸中期の1727年(享保12年)に当院の境内にあったしだれ桜より株分けされた古木で、有名な京都市内の桜の名所・円山公園のしだれ桜の1947年(昭和22年)に枯死した初代も、当院の同じ親木から株分けされたといわれていて、母木を同じくする兄弟木にあたるといいます。
樹高約10m、幹周2m40cm余、地上約1mの部分で南へ支幹が分岐し、更に主幹は二分して東側の一支幹はほぼ水平に南方へ伸び出しており、その優雅な姿に魅せられ訪れる人々も数多いといいます。
その他にも鐘楼下の畑に1905年(明治38年)に日露戦争戦勝を記念して株分けされた2本のしだれ桜の子桜「夫婦桜」や、江戸彼岸や水害復興記念にと当時の京都府知事から贈られた染井吉野、彼岸桜や4月中旬に見頃を迎える八重桜など約30本の桜があり、桜の寺として多くの花見客が訪れます。