京都市右京区鳴滝泉谷町にある浄土宗捨世派の寺院。
周山街道を福王子の交差点から高雄に向かって少し進んだ山麓にある閑静な佇まいの小さな尼寺で、山号は泉谷山、本尊は甲賀の地より勧請したという丈六の阿弥陀如来坐像です。
江戸初期の1627年(寛永4年)、北出嘉兵衛が浄土宗の高僧・袋中良定(たいちゅう)を開山に招き、泉谷の地に念仏三昧道場を建立したのがはじまりと伝わっています。
山号の「泉谷山」は本堂を建立する際にこの地を造成したところ、太陽と星と月が彫られた三光石が現れ、その下から泉が湧き出したことから名づけられたもので、この泉は枯れることなく現在も清らかな清水を湧き出しているといいます。
当初の建物は荒廃したものの1660年(万治3年)に愚故が再興した本堂が現在も残っており、また滋賀県とは非常に縁が深く、本尊・丈六阿弥陀如来坐像は滋賀県甲賀群甲南町(旧上野村)の新宮大明神の本地佛で平安末期の円派の仏師の作によるほか、近江国石塔寺の阿育王塔を模した三重石塔もあるといいます。
この他にも境内には、「丈六」「「三光石」の二つの水琴窟が鳴り響く静寂の庭があるほか、近世の儒者・藤井蘭均、書家・桑原空洞、袋中上人の墓があり、墓地からは京都市内を一望できることでも知られ、その見事な景色から映画やテレビのロケ地としても利用されており、多くの作品で撮影が行われているといいます。
また桜が美しいことでも有名で、観光寺院ではないものの境内を自由散策できるため、ゆっくり桜を見物・鑑賞することができる隠れた桜の鑑賞スポットです。