京都市西京区大原野南春日町、京都市の南西部、西山連峰の麓にある天台宗の古刹。
山号は小塩山で正式には「小塩山大原院勝持寺」といいます。
本尊は薬師如来で、西国薬師四十九霊場の第42番札所でもあります。
創建については定かではありませんが、寺伝によれば679年(白鳳8年)、天武天皇の勅によって神変大菩薩・役行者(えんのぎょうじゃ)が創建したのがはじまり。
その後、791年(延暦10年)に伝教大師最澄が桓武天皇の勅を奉じて堂塔伽羅を再建し、薬師瑠璃光如来を一刀三礼をもって刻み本尊としたとされています。
また平安初期の838年(承和5年)には、仁明天皇の勅によって塔頭49院が建立されるなど隆盛を誇ったといいます。
そして平安後期の僧で歌人としても有名な西行(さいぎょう)は、元は佐藤義清といい、鳥羽上皇に北面の武士として仕えた後、1140年(保延6年)にこの寺で出家し庵を構えており、このことから「西行法師ゆかりの寺」としても知られています。
室町時代に「応仁の乱」の兵火に遭い、仁王門を除きすべて焼失しており、現在の建物は天正年間(1573-92)以降に再建されたもの。
応仁の乱の兵火を免れた「仁王門」は国の重要文化財に指定。
また「瑠璃光殿」に安置されている本尊・薬師如来と、胎内仏薬師如来1体、仁王像2体の計4体もいずれも重要文化財に指定されています。
この他に弘法大師空海がが眼病に悩む人のために病魔退散を祈願したという不動明王および愛染明王を祀る「不動堂」や、阿弥陀堂(本堂)の傍らに座している体の悪いところを撫でると治るといわれる「賓頭盧様(びんずるさま)」などが見どころです。
ただ何といっても別名「花の寺」とも呼ばれるように、古くからの桜の名所としてあまりにも有名。
中でも「ねがわくは 花の下にて 春死なん そのきさらぎの 望月の頃」と詠み、桜を愛してやまなかったという西行法師が植えたと伝わる枝垂桜「西行桜」があることで知られています。
現在のものはその3代目で、春になると法師が得度した鏡石の近く、鐘楼堂の傍らで見事な花を咲かせます。
そしてその他にも染井吉野(ソメイヨシノ)を中心に約100本(400本?500本?)を超える桜が植えられており、境内の至る所で桜を楽しむことができます。
また紅葉も美しく、境内全域で楽しめるますが、中でも瑠璃光殿や庫裡周辺の真っ赤に染まる紅葉は見ごたえ十分。
そして境内は784年(延暦3年)の長岡京遷都時に、藤原氏の氏神として知られる奈良の春日大社の分霊を祀って創建され、桜や紅葉の名所としても有名な大原野神社に隣接していることから、見頃のシーズンには一緒に参拝するのがおすすめです。