蓮とは?
仏教と深いかかわり、池に紅色や白色の清らかな花を咲かせる夏の風物詩
DATA
学名は「Nelumbo Nucifera」、英名は「Lotus」。
ハス科ハス属の多年草水生植物。
7~8月に水上に突き出た花茎の先に花をつける、花の色は紅色(ピンク)または白、花は朝早くに開き、昼過ぎの15時頃には閉じてしまう、開閉を3日繰り返した後4日目に落花する。
原産地はインド説、中国説、日本自生説など諸説あり。
高さは約1m。
名前の由来
古名「はちす(蜂巣)」は花托の形状を蜂の巣に見立てたもので、「はす」はその転訛。
漢名の「蓮」は種子が連なってつくことからその名がついた。
「nucifera」はラテン語の形容詞で「堅果を持った」とか「ナッツの実る」の意味、数千年前の地層などから見つかった種が開花することがあるほど丈夫な殻を持つことで知られている。
歴史
白亜紀後期の1億年前には存在していたといわれる植物の中でも最古のものの一つだが、原産地はインド説、中国説など諸説ある。
また日本にはインドから中国や朝鮮半島を経て仏教とともに伝わった(仏教が百済から伝えられたのは飛鳥時代の552または538年)と考えられていたが、千葉県千葉市の落合遺跡で2000年以上前の地層から蓮の種子が発見され(いわゆる大賀ハス)、7000万~1万年前の蓮の化石も各地で発見されたりしており、古来より自生していたものと考えられる。
利用・用途
観賞用の「花蓮」
池や水田などの湿地で自生するほか、観賞用として鉢植えや池などで栽培される。
とりわけ仏教では泥水の中から生じ清らかで美しい花を咲かせる姿が仏の智慧や慈悲の象徴として重要視され、蓮華座(仏像の台座)・蓮華の彫刻などの意匠とされたり、また西方浄土に神聖な蓮の池があるとの信仰から境内に蓮池がある寺院も多い。
食用の「蓮根」
食用としては通気のため中に穴のあいた地下茎が「蓮根(レンコン)」と呼ばれ野菜としてよく知られている(茨城県、徳島県で多く栽培)。
茎以外に花や葉、種子なども食用となり、「蓮茶(はすちゃ)」「蓮飯(はすめし)」「荷葉飯(かようはん)」などは有名。
薬用の「蓮肉」
また成熟した果実を乾燥させ殻を除いたものは「蓮肉(れんにく)」という生薬として用いられ、鎮静や滋養強壮の作用があるという。
よく似た植物(スイレンとの違い)
蓮には大きく分けて2種類、紅・白の花を咲かせる東洋産種(Nelumbo nucifera)と、黄色の花を咲かせるアメリカ産種(Nelumbo lutea)があるが、色以外は同じで交配も可能。園芸品種も多数ある。
またヨーロッパではハスとスイレンは総称して「ロータス」と呼ばれるなど似た所が多く、両者はよく混同される。
ハスは花を水面から高く上がった所で咲かせる(葉は立ち葉と浮き葉がある)が、スイレンは葉と花を水面に浮かべるという大きな違いがある(ただし熱帯スイレンの中に葉や花を立たせるものもあり)。
他にもハスの葉は円形で撥水性があり、水を掛けるとコロコロとした水玉になる(ロータス効果)が、スイレンにはそのような特徴はない。
瑞兆の印「双頭蓮」
「双頭蓮(そうとうれん)」とは突然変異で1本の茎から2つの花が背中合わせに咲く現象のことで、大変珍しく、古来より縁起の良い、吉祥の印といわれている。
京都では近年、宇治の萬福寺や三室戸寺で見つかっている。