世界遺産とは
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から引き継がれた貴重な資産
「世界遺産(せかいいさん)」とは、ユネスコの世界遺産条約に基づき「顕著な普遍的価値」を有すると認められた文化や自然のこと。
未来の世代に引き継いでいくべき人類共通の財産として手厚く保護されている。
英名は「World Heritage」。
「世界遺産条約」とは
正式名称を「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」といい、世界の文化遺産および自然遺産を損傷・破壊等の脅威から保護し、人類全体のための世界の遺産として保存していくことを目的に1972年の第17回ユネスコ総会で採択された。
「ユネスコ(U.N.E.S.C.O)」とは
正式名称は「United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization」、日本名は「国際連合教育科学文化機関」。
国際連合の専門機関、本部はフランスのパリ。
教育や科学、文化の協力と交流を通じて、国際平和と人類の福祉活動をすすめることを目的に設立された。
世界遺産を保護するための条約を結ぶ手伝いや保護の呼びかけ、危機に瀕している場所や建物に緊急援助も行う。
歴史
1960年にエジプト政府がナイル川流域にアスワン・ハイ・ダムを建設したのがきっかけ。
ダムの完成によりアブシンベル神殿などのヌビア遺跡群が水没する危険があったため、それを救うためにこの遺跡群を移築して保存する国際プロジェクトが立ち上げられた。
これを契機に「人類共通の遺産」という世界遺産条約の基本的な考え方が広がり、「世界遺産条約」の採択へとつながっていったという。
1978年の第2回世界遺産委員会において、アメリカのイエローストーン国立公園やエクアドルのガラパゴス諸島、ポーランドのクラクフ歴史地区など12件(自然遺産4、文化遺産8)が、第1号の世界遺産として登録された。
分類
原則は有形の不動産が対象だが、2003年のユネスコ総会で無形文化遺産保護条約が採択され無形の文化遺産も保護の対象に。
文化遺産 人類の歴史において生み出され受け継がれてきた建造物や遺跡など
自然遺産 地球の生成によってもたらされた自然景観や地質・生態系など
複合遺産 文化遺産と自然遺産の両者の価値を持つ
条約締約国は191カ国で、1007件(文化遺産779件、自然遺産197件、複合遺産31件)が登録されている(2014年11月第38回現在)。
登録数の多い国はイタリアの50件、中国47件、スペイン44件、フランス・ドイツがそれぞれ39件。
自然遺産が多く登録されている国はアメリカとオーストラリア。
191か国中、1件も登録物件を持たない国が30か国。
完成から登録までに30年ほどしか経過していないシドニーのオペラハウスのような例も。
世界遺産に登録されると周辺地域の観光産業に多大な影響があり、日本では世界遺産に登録されることで観光客を呼び込もうとする動きも見られる。
登録基準
条約締結国から提出されたリストのなかから、専門機関による調査と原則年1度のユネスコ世界遺産委員会での審議を経て登録される。
文化遺産
(1) 人類の創造的才能を表現する傑作
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例
(5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの
自然遺産
(7) ひと際優れた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの
(8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる
(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの
(10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる