山茶花とは?
日本固有種で学名も英名もサザンカ、花の少ない時期に咲く貴重な花
DATA
学名は「Camellia Sasanqua」、英名は「Sasanqua」。
ツバキ科ツバキ(カメリア)属の常緑小高木。
晩秋から冬の10月中~12月にかけ、枝先や葉の脇に5~7cmくらいの花を1個から数個つける、通常は花びらの数は6~7枚で一重咲き、花の色は通常白色だが園芸品種にはピンクや赤、班入りやグラデーションの入った複色系や八重咲きのものなど様々ある。
日本の固有種で台湾や中国、インドネシアなどにも分布、日本では本州の山口県、四国、九州、沖縄などで自生する。
高さは2~6mぐらいで、大きいものだと12mになるものも。
名前の由来
漢字名の「山茶花」は中国語でツバキ類一般を「山茶」と呼ぶことに由来。葉がお茶のように飲料となるため「山に生える茶の木」を意味しているという。
「サザンカ」は山茶花の読み「サンサカ」が「サンザカ」と転訛し、更にそれが音位転換して現在の読みになったといわれている。
学名・英名の「Sasanqua」はともに日本名の「サザンカ」が元になっている。
学名の「Camellia(カメリア)」はツバキ属の花を意味し、ツバキをヨーロッパにもたらしたチェコスロバキア宣教師「ゲオルク・ヨーゼフ・カメル(Georg Joseph Kamell)」にちなむ。
歴史
国内
「山茶花」の名が書誌に登場するのは室町時代の一条兼良(1402-81)の著と伝わる「尺素往来(せきそおうらい)」が初めてのことで、それまでは椿との明確な区別はなかったと考えられ栽培の歴史もはっきりと分かっていない。
江戸中期から盛んに改良されるようになり1695年(元禄8年)に江戸の園芸家・伊藤三之丞(3代目伊藤伊兵衛)が著した「花壇地錦抄」や1710年の「増補地錦抄」、1709年(宝永6年)に貝原益軒が著した「大和本草」などでも解説されている。
11代将軍・徳川家斉は山茶花を非常に好んだといわれており、現代でも童謡「たきび」の歌詞で「サザンカ サザンカ 咲いた路 たき火だ たき火だ 落ち葉焚き」と歌われたり、歌謡曲の大川栄策「さざんかの宿」などはよく知られている。
海外
海外へは江戸時代の1775年(安永4年)に、分類学の父として有名なカール・フォン・リンネの弟子でオランダの東インド会社の医師として長崎の出島に約1年間赴任したスウェーデン人のカール・ペーター・ツュンベリー(ツンベルクとも)(Carl Peter Thunberg)がヨーロッパに持ち帰り紹介され、日本名がそのまま学名に用いられている。
利用・用途
観賞用
暖地の山地に自生するほか観賞用としても栽培され、庭木や生垣、鉢植えや切花、盆栽などに用いられる。
その他
種子から採取したサザンカ油は椿油と同様に頭髪用や食用などに用いられる。また木材は堅く小細工物や彫刻、農具の柄のほか薪炭としても使われていた。
品種
野生種は「白または淡紅色の一重咲き」だが、約300種といわれる多くの園芸品種が作られており、花の色や形は様々。
花の大きさは通常5~7cmぐらいだが、12cm以上にもなる大輪の品種もあり、また花期も基本は7~10日ぐらいだが、中には春まで咲き続ける品種もある。もっとも一般的には花期や花の形などで3つの群に分けられる。
「サザンカ群」
晩秋から冬にかけて花を咲かせる。11月~12月(園芸品種は10月~12月)
「カンツバキ群」
ツバキとの種間交雑園芸品種。
真冬に花を咲かせる。11月~2月(園芸品種は11月~3月)
「ハルサザンカ群」
サザンカとヤブツバキが自然に交雑してできた品種。
冬から春に花を咲かせる。2月~4月(園芸品種は12月~4月)
よく似た植物(ツバキとの違い)
ツバキ類(椿)やチャ類(茶)があり、特に同属同科のツバキとは見た目もよく似ており見分けるのは難しい。
両者の違いとしては、次のようなものがある。
落花のしかた
まずツバキは花びらが基部で合着しているため塊ごと落花する。
これに対しサザンカは合着しておらず1枚ずつばらばらに散る(ただしツバキにも一部に散り椿という品種がある)。
開花時期
ツバキは早春から春にかけて咲くのに対し、サザンカは晩秋から冬にかけての10月から12月頃に咲く(ただし寒椿は秋から冬に咲き、園芸品種では春に咲くサザンカもある)。
分布
ツバキは耐寒性が強いため野生のものは全国的だが、サザンカは耐寒性が弱いため本州の山口県と四国・九州・沖縄のみ。
その他
他にもツバキには新芽や子房に微毛がないが、サザンカにはある、ツバキの葉は光沢があり大きく葉縁にギザギザがないが、サザンカの葉は艶がなくやや小さめで葉縁にギザギザがある、などの違いがある。