京都府与謝郡伊根町の伊根地区にある「舟屋の里」として有名な舟屋と呼ばれる民家の群落。
京都府の北端、日本海側にある丹後半島の東の端に位置し、伊根湾を囲むように周囲約5kmの湾岸に沿って230軒余りの舟屋が建ち並んでいます。
「舟屋」とは伊根において生活拠点で主に山側に建てられる母屋とは別に、湾岸沿いの道を隔てた海側に建てられる別棟で、1階部分に海に向かって大きな口を開けた船のガレージ(収納庫)を備え、その上に住居(居間)があるという珍しい建築様式の建物です。
伊根湾は日本海側では珍しい南向きの湾で、穏やかで干満の差が小さいことから海岸にせり出すような形で海面すれすれに建てることができ、船などで海側から眺めるとまるで家が海に浮かんでいるような独特の景観が楽しめます。
古くから天然の良港として知られ、暮らしの中心には常に漁業があり、舟とともに暮らすこの地区特有の伝統的建造物です。
舟屋は江戸中期、1800年代前後から存在していたといいますが、当時は茅葺きの小屋であったといいます。
現在のような木造2階建てに建て替えられたのは明治中期から昭和初期にかけてのことで、集落に道路を敷いた際、海側に舟置き場や蔵などを集積させたのが現在の特長ある伊根の町並みのはじまりだといいます。
伊根町ではこれらが今でも大切に残されており、観光地というよりも普段の生活が息づく漁村といった雰囲気を醸し出し、その美しく壮観な眺めの中にもどこか懐かしさを感じさせる「日本の原風景」を形作っているといえます。
そしてこれだけの数の舟屋がまとまって残っているのは全国的にも大変珍しいことから、2005年(平成17年)に「伊根浦」として漁村では全国で初めて国の「重要伝統的建造物群保存地区」にも選定されています。
この他にも「丹後天橋立大江山国定公園」の丹後半島海岸地区の一部を構成するほか、「日本で最も美しい村」連合にも加盟。
近年では伊根町内での映画やドラマのロケ地として映画「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(1982)」「釣りバカ日誌5(1992)」や、NHKの連続テレビ小説「ええにょぼ(1993)」などの舞台にもなるなど全国的な知名度も徐々に上昇しています。
湾内ではブリやタイの養殖などが営まれ、また水深の深い伊根湾は絶好の釣りスポットで、黒鯛(チヌ)釣りや夜釣りを存分に楽しめる場所として人気なほか、観光地としても人気で、とりわけ徒歩あるいはレンタサイクルを利用して街並みを散策するのがオススメです。
初めて訪れたのにまるで故郷に帰ってきたかのような、どこか懐かしい古きよき日本の原風景を体験できると評判になっています。
これらの舟屋はいろいろなお店として活用されているほか、「民宿」として客室に利用されている場合もあり、舟屋でさざ波の音を聞きながら情緒たっぷりの海の景色を眺めることができます。
また遊覧船や海上タクシーに乗り海から眺める舟屋群は一見の価値があり、中でも「伊根湾めぐり遊覧船」では舟屋群を眺めつつ船に群がるカモメにエサをあげるのも、醍醐味の一つです。
この他にも湾岸から陸地の方に向かっては丘陵地が広がっているため、丘の上にある道の駅「舟屋の里公園」の展望台からは伊根湾を一望できる絶景が楽しめると人気で、また公園内には、伊根漁港で揚がった新鮮な活魚を調理し提供してくれるレストランやお食事処があるほか、海の幸がたくさんのお土産店やラウンジ、観光案内所などもあります。
ソメイヨシノや枝垂桜といった桜から、ツツジ、アジサイ、サルスベリまで、四季折々の美しい花が咲き競う花公園もおすすめで、また色々なイベントも多数催され、シーズンにはシーカヤックで舟屋めぐりも楽しむことができます。