「不動明王」とは
伝教大師・最澄の開いた天台宗(台密)や弘法大師・空海が開いた真言宗(東密)で重要視される「密教(みっきょう)」とは秘密仏教の略で、釈迦が現世において人々を救済するために分かりやすく説いた華厳経・般若経・涅槃経・法華経などの「大乗仏教=顕教(けんぎょう)」に対し、宇宙の真理そのものである大日如来が説いた究極の教えのことをいう。
この点一般の民衆には秘匿された、師資相承によって伝持(師弟関係によって口伝)される点に大きな特徴がある。
大日如来は密教における悟りの境地を視覚的に描いた「曼荼羅(まんだら)」においてその中心に位置し、宇宙のすべてを司る中心的な存在であり、あまりに崇高で直接には拝みにくい。また大日如来が衆生を教化する際に通常の姿のままでは教化できない。そこで大日如来の化身として現れたのが「不動明王」である。
「不動明王(ふどうみょうおう)」は真言密教の教主・大日如来の化身とされ、忿怒(ふんぬ)の姿をもって現れたもので、その見た目は岩上に座して火炎に包まれた姿で右手に剣、左手に縄を持ち、二童子を従える姿が一般的。
曼荼羅において五大明王の中心をなし、その憤怒の形相により悪魔を降伏させて全ての障害を打ち砕いてくれるほか、仏道に従わない者は厳しくも優しい慈悲の心と智慧の炎で導き救済してくれる役目も担っており、行者守護・除災招福・戦勝祈願・悪魔退散などとりわけ現世利益を求める人々から厚い信仰を集めている。
日本では「お不動さん」の呼び名で親しまれており、観音菩薩や地蔵菩薩とともに古くより人気が高い。