秋明菊とは?
秋に菊に似た花を咲かせ、貴船に多く自生し「貴船菊」の別名を持つ
DATA
学名は「Anemone Hupehensis」、英名は「Japanese Anemone」。「貴船菊(キセンギク・キブネギク)」の別名あり。
キンポウゲ(金鳳花)科イチリンソウ属(アネモネ属)の多年草植物。
9月~10月にかけ、風になびく細長く伸びた茎の先に菊の花に似た3~5cmの可憐な花を咲かせる(ただし花びらのように見えるのは萼(がく))、花の色は白やピンク、淡紅紫色。
中国原産、日本にも自生するが古い時代に中国から渡来し、耐寒性が強く日陰でも育つことから野生化したという説が有力で本州や四国、九州に分布。
高さは50cm~1m、交配種の中には1.5mほどになるものも。
名前の由来
和名の「秋明菊」は秋に菊に似た花を咲かせるというところからきているが、学名・英名にあるように菊の仲間ではなくアネモネの仲間、中国では「秋牡丹」。
別名の「貴船菊」は京都市北部の貴船山に多く見られることから。
「Anemone」はギリシャ語で風を意味する「anemos」からきている言葉らしい。
歴史
江戸前期の園芸家・水野元勝が著した日本最初の園芸書「花壇綱目(かだんこうもく)」に「秋明菊」の名前で記載があるほか、1709年(宝永7年)に儒学者で本草学者としても知られる貝原益軒が編纂した「大和本草(やまとほんそう)」には中国名の「秋牡丹」で記載がある。
それ以外にも「貴船菊」や「しめ菊」「紫衣菊」「加賀菊」「越前菊」「唐菊」「高麗菊」「秋芍薬」など様々な別名を持ち文献等にも記載が見られるため、日本へ渡来した明確な時期は分かっていない。
ただ室町中期1444年(文安元年)の国語辞書「下学集(かがくしゅう)」では、中国へ渡航した修行僧が持ち帰り日本にはない「黄泉の国の秋に咲く菊」として「秋冥菊」と名付けたとあり、鎌倉後期~室町初期には日本に渡来していたものと考えられている。
利用・用途
観賞用として栽培されるほか、各地の山野や里山に自生。切り花をはじめ花壇や鉢植えに広く利用されている。
よく似た植物
19世紀中頃にネパール原産のアネモネ・ビティフォリアと掛け合わせて海外で作られた園芸品種「アネモネ・ヒブリダ」が逆輸入されて広く普及しており、それ以外の交配種も含めて総称的に「シュウメイギク」と呼ばれることが多い。