竹林とは?
緑色の稈が静寂と幽玄の世界を演出、たけのこは日本の春の風物詩
DATA
たけのこ(筍)の名産地として知られる乙訓地域など、京都の竹林で見られるのは主に「孟宗竹(モウソウチク)」。
学名は「Phyllostachys Heterocycla f. pubescens」、英名は「Moso Bamboo」。別名「江南竹」。
イネ科マダケ(真竹)属の大型の竹の一種。
他の竹同様に木質化した長い稈(かん)(中空になっている茎)を持ち、若芽は「筍(タケノコ)」と呼ばれ食用とされる。
花は67年に1度咲くとされるが、これを証明する記録は非常に少ない。また開花すると群生する竹藪(竹林)全体が枯れてしまうという。
中国江南地方原産、アジアの他オーストラリアや中南米、アフリカなどの温暖で湿潤な地域に分布し日本では北海道函館以南に広く自生する。
高さは12~15mで大きいものでは高さ20m、直径20cmに達し日本にある竹の中では最も大きい。
名前の由来
「孟宗竹」の名前は、雪の降る寒い冬に病気の母のためにたけのこを探し掘り当てた、中国の二十四孝の一人で三国時代の呉の人物「孟宗(もうそう ?-271)」にちなむ。
歴史
日本固有の竹とは
竹の歴史は古く縄文後期の遺跡から竹かごが出土し、その後も生活の必需品として欠かせないものであった。ただし古くから日本にあったのは真竹(まだけ)や淡竹(はちく)などの品種である。
「孟宗竹」の日本への伝来
孟宗竹は中国江南地方原産で、日本への伝来については鎌倉時代京都説と江戸時代鹿児島説の2説がある。
京都説は1228年(安貞2年)に曹洞宗の開祖として知られる道元が、宋の杭州から持ち帰り長岡京市にある寂照院(じゃくしょういん)に植えたのを最初とし、「日本孟宗竹発祥之地」の石碑が建つ。現在も乙訓地域はたけのこの名産地としてよく知られている。
一方鹿児島説は江戸中期の1736年(天文元年)に薩摩藩主・島津吉貴が琉球王国経由で清から2株を輸入し現在の鹿児島市「仙巌園(磯庭園)」に移植したのがはじまりとする。
「竹林」から「竹藪」に
その後孟宗竹のタケノコが以前より日本に自生していたマダケやハチクのものに比べ美味なことから各地で栽培されるようになり、「竹林」として維持・管理されてきた。
しかし戦後の里山管理の衰退や竹材需要の減少、中国産の安価なタケノコの輸入の増加などに伴い国内の竹林は放置されて「竹藪」と化し、その結果生息域が拡大し他の植物の成長を阻害するなどの問題も起きているという。
利用・用途
観賞用
整備・管理された竹林は観光スポットとしても人気。
食用
主に筍(竹の子)を収穫するために栽培される。旬は3~4月頃。食用として栄養価が非常に高い。
マダケやハチクのものに比べて大型で肉厚、柔らかくえぐみも少ないため人気が高い。
その他
竹は成長スピードが早く入手が容易、削る曲げるなどの加工がしやすい、抗菌性や消臭性が高いなどの理由から、建築資材や日用品・工芸品・文具・武具(竹刀・竹槍・弓)・玩具(竹馬・竹とんぼ)など様々な用途に用いられる。
孟宗竹の皮には紫褐色(ビロード)の毛が密生しておりおにぎりなどの食物を包むのに用いられる。
また枝葉を切り落とした桿(さお)は籠やざる、簾などの竹細工に使用されるほか、近年は竹炭の原料としても注目されている。
よく似た植物
真竹(マダケ)
学名は「Phyllostachys Bambusoides」、英名は「Madake」「Giant Timber Bamboo」。
日本原産で河川の堤防などで普通に見られ、全国1位は大分県。真竹は節が2筋になっているのが孟宗竹との大きな違い。
120年に一度開花するといわれている。
孟宗竹に比べるとやや細く、高さは20mほどまで成長するが太さは直径14cmほど。
弾力性に優れ弓道の弓や竹細工、竹工芸などの素材としては孟宗竹を上回る繊細さを持ち竹の中で最も多く用いられている。
タケノコは「苦竹」の別名のとおりやや苦味があり、あく抜きが必要だが美味。収穫期は5~6月頃。皮に黒い斑点がある。
淡竹(ハチク)
学名は「Phyllostachys Nigra var. henonis」、英名は「Henon Bamboo」。
呉から渡来したとの由来から「呉竹(くれたけ)」の別名。日本または中国原産で奈良時代には日本にあったものと考えられている。
河川の堤防などで見られ、耐寒性に強いことから特に日本海側に多い。
120年に一度開花するといわれている。
高さ15mほどまで成長し直径は10cmと真竹よりさらに小さい。
名前の由来は稈(かん)に白い粉がつき全体的に白味を帯びて見える所から。
孟宗竹同様に筍は食用となり収穫期は4~5月頃、皮に黒い斑点がない。
細かく分岐する枝は竹ぼうきの材料に、桿(さお)が割りやすく茶筅や簾によく用いられる。
かぐや姫が登場する有名な昔話「竹取物語」の竹取の翁の歌には「くれたけ」とあり、物語で登場する竹の種類は淡竹ともいわれている。
笹(ササ)
イネ科タケ亜科の小型の植物、竹に非常によく似ており日常的には竹とあまり区別されないことも多い(大型のものが竹、小型のものが笹という程度の区別)。
主な品種にササ属の「隈笹(クマザサ・学名 Sasa Veitchii」)やメダケ属の「女竹(メダケ・学名 Pleioblastus Simonii)」がある、英名は「Bamboo Grass」。
竹との違いは、笹は茎を包む鞘(皮)が剥がれずに枯れるまで残るが、鞘から外れて竹は茎が裸になる。
日本を中心に朝鮮半島やサハリン、千島列島などに分布。
高さは多くは1~2m以下と竹より小型なのが特徴。
葉に防腐作用があり、鱒寿司やちまきなどの保存食を包むのによく用いられる。
また7/7の七夕の笹飾りやえびす神社の「十日戎(とおかえびす)」の「商売繁盛で笹持って来い」はよく知られている。