「川床」とは京都の夏の風物詩の一つで、蒸し暑い京の夏を涼しく過ごすため、川沿いに店を構える料理店や茶屋が川の上など屋外に設ける座席のこと。
京都では例年5月初め頃から9月末頃まで、鴨川、貴船、高雄、鷹峯などで楽しむことができます。
そもそも京都において「川床」の文化が始まったのは、およそ400年前の安土桃山時代から江戸時代にかけてのことで、鴨川の横にあった茶店などが夏の涼を求めて、床几(しょうぎ=腰掛け)を並べて鴨川に桟敷を設け、客をもてなした「鴨川納涼床」がはじまりだといわれています。
一方「貴船の川床」の歴史は鴨川に比べると新しく、大正時代に始められました。
元々貴船の地を流れる貴船川は京都の中心を流れる鴨川の源流の一つで、貴船は京の都の水源地であり、京都の水をつかさどる神様をお祀りする貴船神社がある場所として、現在も多くの参拝客が訪れ、また「京の奥座敷」とも呼ばれるように古くから避暑地としても知られていて、貴船神社近くの貴船川沿いには参拝客や観光客をもてなすための旅館や茶店が数多く立ち並んでいる場所でした。
そしてそれらの茶店のうちの一つが涼を求める観光客たちが暑さしのぐために川の水に足をつけられるようにと、床几を川面に設置したのが起源と言われています。
当初は今のように料理を楽しむ形式はまだなく、川に足をつけて涼むための場所だったといいますが、足などを洗っているところにお茶や食べ物などを出してもてなすようになり、次第に現在の形になっていったといいます。
その後1930年(昭和5年)に叡山電鉄が鞍馬まで開通すると、以前に比べて貴船を訪れる人も増加し、また鞍馬山から降りてくる人々に向けて川床を出すお店の数も徐々に増えていったといい、現在貴船では16軒のお店が川床の営業を行うようになっています。
この点、貴船川沿いの川床は「かわどこ」と読むのが一般的で、基本的にどのお店も川の上に設置された床の上に座敷が設けられ、そこで各店ごとに趣向を凝らした料理を味わうことができます。
座敷は全国的にも稀な川のすぐ真上、それも川面から約30cmのところに設けられ、座敷から素足をつけられる、あるいは手を伸ばせば水面に届きそうなくらいの距離であることから、真夏の炎天下でも平均気温23度と京都市内の温度より5~10度は低く、まさに天然の冷房といった趣向で、クーラーとはまた違う心地よい涼しさを感じることができます。
街中の喧騒や異常気象の猛暑も、京都盆地特有の蒸し暑さも忘れ、貴船川のせせらぎの音を聞きながら料理が楽しむことができるほか、座席からは新緑から夏にかけての渓谷美を堪能することもできます。
料理は流しそうめん、山菜料理や鮎や鱧(はも)などの川魚料理のほか、会席料理、すきやきなど、店によってさまざまで、営業は5月からスタートしますが、要予約の店が多いので注意が必要です。
空席があれば入ることは出来ますが、貴船の川床は非常に人気が高くどこも混雑するため、予約して行くのがお薦めです。
その他の注意点としては店舗によっては予約すると貴船口駅からの送迎があるほか、雨の場合は川床に降りることが出来ず室内での食事となります。