沙羅双樹とは?
「平家物語」の冒頭にも登場する「釈迦入滅」の木
DATA
学名は「Shorea Robusta」、英名は「Sal Tree」。「娑羅双樹」とも書く。
フタバガキ(二葉柿)科コディアエウム属の常緑高木。
初夏に白い花を咲かせ、ジャスミンにも似た香りを放つ。
インド北部の高地原産で、インドから東南アジアにかけて広く分布。
高さは30mにも達する。
名前の由来
原産地のインドでは「sal(サル)」で、「沙羅」はその漢名、そして釈迦入滅の際にこの木が東西南北に2本づつ生えていたため「娑羅双樹」と呼ばれた。
学名の「robusta」は大型とか頑丈という意味。
歴史
釈迦入滅の際(亡くなったとき)に四方を囲んでいたこの木が、枯れて鶴の羽根のように白くなったという伝説を持ち、「仏教の三大聖樹」の一つとされる。
※ちなみに仏教の三大聖樹とは、
「無憂樹」(マメ科) この木の下で生誕したと伝わる
「印度菩提樹」(クワ科) この木の下で悟りを開いたと伝わる
「沙羅双樹」(フタバガキ科) この木の下で入滅したと伝わる
そのため釈迦入滅の様子を描いた「涅槃図」にも描かれることが多い。
また平家の栄枯盛衰を描いた「平家物語」の冒頭に名前が出てくることでも知られる。
「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理(ことわり)をあらはす
おごれる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし
たけき者も遂にはほろびぬ ひとへに風の前の塵に同じ」
「ナツツバキ(夏椿)」
日本における「沙羅双樹」
インド原産の沙羅双樹は耐寒性が弱いため、日本では温暖な地域を除き温室がないと育たない。
そのため多くの寺院では「沙羅樹」の別名を持つ「ナツツバキ(夏椿)」を「釈迦入滅ゆかりの木」として植えている。
DATA
学名は「Stewartia Pseudocamellia」、英名は「Japanese Stuartia」。「沙羅樹(サラノキ・シャラノキ)」の別名あり。
ツバキ科ナツツバキ属の落葉高木。
6月上~7月初旬にかけ、直径5cmほどの白い花を咲かせる、花びらは5枚で花糸が黄色い、一日花で朝開花し夕方に花の形でそのまま落花するのが大きな特徴。
日本および朝鮮半島南部が原産で、日本では東北の宮城県以西の山地に自生。
高さは5~15m程度まで成長する。
名前の由来
「沙羅樹」の別名は、ある僧侶が釈迦ゆかりの木が日本にもないかと山中を探したところ夏椿を発見、これを沙羅双樹と勘違いし広めたためともいわれる。