京都府亀岡市稗田野町、戦国武将・明智光秀(あけちみつひで 1528?-82)が基礎を築いた亀山の城下町の古い町並みが残る亀岡市の中心部から西へ約7km、静かな山あいにある「京の奥座敷」とも呼ばれる温泉郷。
京都市内からであれば京都駅からJR嵯峨野線で亀岡駅まで20分の後、駅からは送迎のシャトルバスでアクセスすることができ、また大阪や神戸からも車で約1時間という好立地にある温泉街です。
戦国時代に傷ついた武将たちが刀傷を癒すため湯治に訪れたとも古文書に記されているなど、古くより除災除厄・万病の治癒の湯として親しまれていましたが、、現在の温泉郷ができたのは比較的新しく昭和30年代に入ってからのことだといい、温泉旅館「すみや亀峰菴」の初代が前述の古文書の存在をうけて試しに水質調査を依頼したところ、源泉が再発見され、それを受けて1955年(昭和30年)10月に同地で創業したのがはじまりで、当時より知る人ぞ知る人気の宿であったといい、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ夫妻や俳優・松田優作などもお忍びで訪れたといいます。
その後も豊かな自然の中で、都会の喧騒を離れて静かでゆったりとした時間を過ごすことができるとして人気を集め、また亀岡を代表する観光資源の一つである「保津川下り」や京都観光の拠点として利用する人も多いといい、京阪神をはじめ全国各地から多くの宿泊客が訪れるといいます。
温泉以外にも丹波の味覚を楽しむこともでき、春は山菜や筍、夏は鮎、秋は松茸、冬は地酒にぼたん鍋と、豊かな自然の恵をそのままに頂くことができ、中でも松茸は宿の料理には欠かせない食材として重宝されているといいます。
国道372号線のバイパス部分を中心に6つの宿泊施設が点在しており、この中には日帰り入浴が可能な施設もあるほか、また温泉郷には有料の温泉スタンドも設置されていて、お湯を持ち帰り家庭でも本格的な温泉を楽しむことができるというのも魅力の一つです。
この点、温泉郷には里に棲みつき悪事を働く鬼たちに困り果てた村人が、亀岡で産出する豆粒大の小石を投げつけて鬼退治をしたところ、鬼の目から溢れた涙が溜まり、それが「湯の花温泉」になったという、「節分」の豆まきの起源になったともいわれる開湯にまつわる何ともユニークな伝説が町おこしの一環として創作され、これにちなんで沿道などに鬼の像が設置され名物となっていたといいますが、これらは現在は撤去されてしまっているようで、その後2019年(令和元年)には新たな観光大使として「湯の花温泉むすめ」が選ばれるようになり、観光PRに一役買っています。
ちなみに鬼退治に使われたとされる不思議な霊力のある石については、積善寺境内にある菅原道真ゆかりの桜天満宮の付近から多く出土し、断面が開花した桜びらのように見えることから「桜石」と呼ばれ、「稗田野の菫青石仮晶(ひえだののきんせいせきかしょう)」として1922年(大正11年)に国の天然記念物に指定されています。
この桜石の実物は現在は寺で見ることはできず、亀岡市役所の1階ロビーや亀岡市文化資料館にて展示されていて見学することができるようです。