京都市左京区南禅寺福地町、有名な南禅寺の三門のすぐそばにある南禅寺の塔頭寺院。
南禅寺を開山した無関普門(むかんふもん)(大明国師)は1292年(正応4年)に東福寺の龍吟庵で亡くなりましたが、南禅寺の山内に開山の塔所がないことを遺憾に思った南禅寺第15世・虎関師錬は1339年(暦応2年)、光厳上皇から塔所建立の勅許を得て、翌年その塔所として建立したのが天授庵のはじまりです。
その後「応仁の乱」で焼失してしまいますが、1602年(慶長7年)に戦国武将で文化人としても名高い細川幽斎により、細川家の菩提寺として再興されています。
本堂(方丈)は柿皮茸屋根の建物で、内部の襖絵は長谷川等伯の筆で重文にも指定。
この他に幽斎と夫人の画像などもあるといいますが、特別拝観されることもあるものの通常は非公開となっています。
そして天授庵といえば、枯山水庭園と池泉回遊式庭園の二つの庭園があることで有名です。
一つは小堀遠州の発案とされる方丈前庭(東庭)の枯山水庭園で、白砂の庭が苔で縁取られ、菱形の畳石が並ぶ姿が印象的であり、さつきの刈り込みが美しいことで知られています。
もう一つは南北朝時代の作庭と伝わる書院南庭の池泉回遊式庭園で、池の周囲に杉や紅葉が多く茂り、創建当時の古庭の趣を残す野趣溢れた雰囲気が特徴です。
そして秋は紅葉の名所として有名で、本堂から眺めることのできる方丈前庭の横一杯に広がる紅葉は、赤黄橙のグラデーションが色鮮やかで実に美しく、白砂と緑の苔に映える姿が印象的なほか、趣の違う書院南庭の池泉回遊式庭園では、水面に映し出される紅葉が楽しめるほか、夜間特別拝観にて楽しめるライトアップされた紅葉もまた格別の美しさです。