芙蓉とは?
枝ぶりが日ごとに変わると芭蕉が詠んだ、夏に花を咲かせる貴重な花
DATA
学名は「Hibiscus Mutabilis」、英名は「Confederate Rose」「Cotton Rose」「Cotton Rosemallow(コットン・ローズマロー)」。
アオイ科フヨウ属の落葉低木。
夏から秋にかけての7月~9月、葉の上部の脇に花びらが5枚で椀状の10~15cmぐらいの大輪の花を咲かせる、花の色は白色またはピンク色、園芸品種には赤色や八重咲きのものも。
朝開いて夕方しぼむ一日花だが、花期は長くその間は途切れなく毎日のように新しい花を咲かせ続ける。
枯れたあとの姿も「枯れ芙蓉」と呼ばれるぐらい印象的。
原産地は日本や台湾、中国、やや耐寒性に弱いため日本では南西部の四国・九州・沖縄に自生(古い時代に中国から渡来したものとの説も)。
高さは2~3m。
名前の由来
中国名から、ただし「芙蓉」は元々中国では蓮(ハス)のことで、唐代までは「木芙蓉(もくふよう)」と呼ばれていたので注意が必要である。
英名の「Cotton Rose(綿の薔薇)」は花が薔薇に似て樹形が同じアオイ科の「綿」に似ていることに由来。
学名の「Mutabilis(ムタビリス)」は変わりやすいとか不安定なという意味。
歴史
書誌に登場するのは室町時代の一条兼良(1402-81)の著と伝わる「尺素往来(せきそおうらい)」が初めてで、この頃には栽培されていたことが分かる。
一日花で日によって花の咲く位置が異なる様を松尾芭蕉が「枝ぶりの 日ごとに変る 芙蓉かな」と詠んでいる。
利用・用途
暖地に自生するほか、観賞用に庭植えや鉢植えとして用いられ、園芸品種も多い。
樹皮は丈夫なことから和紙材料などに使われたりする。
よく似た植物
「スイフヨウ(酔芙蓉)」
学名は「Hibiscus Mutabilis cv. Versicolor」。
咲き始めは白色で、時間とともにピンク色に変化する八重咲きの変種。
名前の由来は花の色が変わる様を酒に酔って顔が赤くなることに例えた。
「アメリカフヨウ(クサフヨウ)(草芙蓉)」
学名は「Hibiscus Moscheutos」、英名は「Rose Mallow」。
7~9月頃に直径20cmにもなる大きな花をつける、葉は卵状楕円形。
米国アラバマ州の原産で多数の種の交配種からなる園芸品種。
高さは1~2mぐらいまで成長する大型の多年草(木ではない)
「ハイビスカス(ブッソウゲ(仏桑花))」
学名は「Hibiscus Rosa-Sinensis」、英名は「Chinese Hibiscus」。
アオイ科フヨウ属。
6月上~9月頃に花を咲かせ、花の色はピンク、赤、オレンジ、黄、白と様々、雄しべが柱頭の先端につき色づく、また花びらの中心が濃い赤やピンク色。
アジア南部からハワイが原産、温暖な南部のみ生息し沖縄では当たり前のように見られる。それ以外の場所では温室で育てられる。
日本の本土へは慶長年間の1610年頃に薩摩藩から琉球産のブッソウゲを徳川家康に献上した記録が最初。
高さは50cm~3mぐらいまで成長する。
「タチアオイ(立葵)」
学名は「Althaea Rosea」、英名は「Hollyhock」。
京都三大祭の一つである葵祭や徳川家の家紋として知られる「双葉葵(ふたばあおい)」とは全く別の品種。
アオイ科ビロードアオイ属の多年草植物。
6~8月と他の似た品種の中では最も早い時期に咲く、花の色は赤、ピンク、白、紫、黄色と様々、花びらの中心部分が淡い緑色。
茎の下の方に葉が付き、草なので茎が緑色をしているのが特徴。
地中海沿岸と考えがれている、日本には古くから薬用として渡来。
高さは1~3mぐらいまで成長する大型の多年草。
フヨウとムクゲの違い
同じアオイ科フヨウ属の樹木で、一日花で花の咲く時期や姿形も似ているため間違えやすい。
「樹形」
フヨウは多く枝分かれして横にもこんもりと広がる。
ムクゲは枝を真っ直ぐ上に伸ばし、縦長のすらっと直立した形。
「花期」
フヨウは8月から10月にかけて、ムクゲは梅雨の時期の6月下旬から10月中旬とやや早い。
「葉や花」
フヨウの方が大きい(花は品種により若干差異あり)。
またフヨウは手のひら状で多角形をしているのに対し、ムクゲは細長い。
「めしべの形状」
フヨウは5本に分かれ先端が曲がっている。
ムクゲは真っ直ぐ。