京都府八幡市八幡福禄谷、大阪府枚方市との府境にほど近い国道1号(京阪国道)と府道284号が交差する付近にある洞ヶ峠(ほらがとうげ)の西麓に伽藍を構える臨済宗妙心寺派の寺院。
山号は雄徳山で、本尊は釈迦三尊(釈迦如来・文殊菩薩・普賢菩薩)および十六善神。
江戸後期の1783年(天明3年)3月、当時曹洞宗や黄檗宗と比較して衰退していた臨済宗を復興させ、臨済宗中興の祖と称される江戸中期の禅僧・白隠慧鶴(はくいんえかく 1686-1769)の高弟で白隠四天王の一人である斯経慧梁(しきょうえりょう 1722-87)が臨済宗妙心寺末の修行道場「江湖道場」として開創したのがはじまり。
その創建にあたっては八幡で誕生した幻の焼きものである南山焼(なんざんやき))の創始者・浅井周斎(あさいしゅうさい 1720-1800)から3万坪の土地の寄進を受け、八幡市から大阪府枚方市にまたがる広大な境内地には山門や円福寺で得度を受けたという京セラの創業者・稲盛和夫の寄進によって2003年(平成15年)に再建された本堂と庫裡、2012年(平成24年)に再建された禅堂、そして東京の有栖川宮家にあったもの移築したという有栖川宮旧御殿などの建物が整備され、京都府洛南の一大道場として多くの雲水たちが日夜坐禅や托鉢などの修行に励んでいます。
同寺で一番の見どころである寺宝の「達磨大師坐像」は、像高82cm、檜材寄木造、玉眼嵌入、鎌倉期の作とされる日本最古の木造達磨大師像で、大和国達磨寺から八幡に移され石清水八幡宮社務の田中家に秘蔵されていたものを、江戸後期の1807年(文化4年)に妙心寺の海門和尚が譲り受けて当寺に安置したといい、「三大達磨」の一つといわれ国の重要文化財にも指定されていて、「禅堂」に聖僧として祀られていることから、同寺は別名「達磨堂」とも呼ばれています。
普段は禅僧の修行専門の道場として門が閉ざされているため、境内は通常非公開で山門の中に立ち入ることはできませんが、年に2回、4月20日と10月20日の大祭「萬人講(万人講)(まんにんこう)」の日に限って境内が解放され、達磨大師坐像も開帳されてその姿を拝むことができるようになっています。
そして達磨像を拝し赤膳の精進料理を食べると開運、厄除け、中風除けのまじないになるといわれていて、当日は山門前などに手づくり市や露店なども並び、京阪の樟葉駅から臨時の直通バスも運行され、近隣から多勢の参拝客が訪れて大いに賑わいます。
また近年は毎年12月20日頃に高さ15~20mのイチョウの木に約1300本の大根が吊るされ天日干しされる「大根干し」の光景が、「大根ツリー」と呼ばれてSNSやマスコミなどにも採り上げられるなど注目を集めており、京都の冬の風物詩の一つとして定着しつつあります。
大根は1か月かけて乾燥させた後、樽に漬けてたくあんにし、僧侶の食事に供されるほか、毎年4月と10月に行う「万人講」の精進料理としても参拝客に振る舞われるといい、少なくとも50年以上前から行われている冬の恒例行事で、大根は修行僧たちが八幡市をはじめ大阪府枚方市や交野市、寝屋川市の農家や一般家庭を托鉢して集められたものだといいます。