京都府京都市上京区岡松町、烏丸通と駅名の由来でもある今出川通の交差する「烏丸今出川」交差点の地下にある、京都市市営地下鉄烏丸線の駅。
京都市営の「地下鉄烏丸線」はその名の通り京都市の中央を南北に通る烏丸通の地下を北は京都国際会館駅から京都駅を経て南は竹田駅までつなぐ路線ですが、この地下鉄が開通する前の烏丸通には、同じ京都市交通局の運営していた路面電車「京都市電(きょうとしでん)」の烏丸線が路面上を走っていました。
そもそも京都では明治維新による天皇の東京行幸に伴って衰退の一途を辿る京都を復興させるため、都市基盤の整備や勧業政策など様々な近代化政策が実施されましたが、その中でも琵琶湖疏水はその目玉ともいえるプロジェクトで、その水力を利用した水力発電で生み出される電力を元に京都で日本初の電車が開業することとなります。
1895年(明治28年)に民間企業である「京都電気鉄道」により第1期区間が開業した後、1912年(明治45年)には京都市によって市営の路線が開設され、更に1918年(大正7年)には京都電気鉄道が京都市へと買収されて全面市営化されると、その後は戦後に至るまで路線が延長され、市民の足として大活躍しました。
しかしその後の自動車の普及に伴って乗客の減少が続き、経営が困難となったことで順次路線は廃止されていき、また1969年(昭和44年)には京都の中心部で十文字に交差する地下鉄路線とそれを補完するバス路線網の整備という京都市の新たな交通計画が決定したのを受け、1978年(昭和53年)9月30日には市電は全面廃止となりました。
そして京都市電のうち烏丸線は地下鉄路線の整備事業に際し1974年(昭和49年)3月31日に七条烏丸～京都駅前を残して大部分が廃止となり(残る区間も1977年(昭和52年)に廃止)、地下鉄烏丸線の建設は廃止後すぐに始められましたが、埋蔵文化財の発掘調査などもあって7年の歳月を要し、1981年(昭和56年)5月29日にまず北大路駅～京都駅間が開業された後、1988年(昭和63年)には南側の京都駅～竹田駅間、1990年(平成2年)には北側の北山駅～北大路駅間、更に1997年(平成9年)には国際会館駅～北山駅間と順次延伸され、現在に至っています。
「烏丸今出川」の交差点には市電時代には「烏丸今出川駅」が設置され、烏丸通の北大路から京都駅までを南北に通る市電烏丸線と、今出川通の白梅町(西大路通)から百万遍(東大路通)を東西に通る市電今出川線が交差するターミナル駅でもありましたが、その後1981年(昭和56年)5月29日の京都市営地下鉄烏丸線の北大路駅～京都駅間の開業に際しては「今出川駅」の名で新たな駅が設置されています。
島式ホーム1面2線の地下駅で、改札は無人の北改札と有人の南改札の2か所あり、出入口は北改札側に1・5番までの2か所、南改札側に3・4・6番の3か所の計5か所が設けられています(5番出入口は欠番)。
駅から烏丸通をやや北に進んだ所にある同志社大学今出川キャンパスの入口門のそばに1番出入口があるほか、その烏丸通を挟んで向かいに2番出入口、そして烏丸今出川交差点の北西側に3番出口があり、交差点北西側に4番出口、南西側に6番出口があり、南東側の京都御苑側には出入口はないことから、3番か6番出口から交差点を渡って向かうこととなります。
京都市民の憩いの場所である京都御苑がある南東側に1番出入口があるのをはじめ、北西側に2番、南東側に3番、南西側に4番出口とそれぞれの交差点角に出入口があり、その他には交差点南の竹屋町通との烏丸通との交差点北西に5番、その南の京都新聞社本社ビルの所に7番、その通りを隔てた向かいの京都商工会議所洛央支部近くに6番出口があります。
京都御苑の北西角に位置し京都御苑や京都御所へのアクセスのほか、御苑の北側にある相国寺や同志社大学今出川キャンパスへのアクセスにも便利で、観光客や学生の利用も多い駅となっています。
ちなみに駅名の由来となっている「今出川通(いまでがわどおり)」は京都市の主要な東西の通りの一つで、東は白川通の東の銀閣寺門前から途中百万遍交差点、京都御苑の北端などを通り、西は北野天満宮前、西大路通の北野白梅町交差点を経て嵐電等持院駅のやや西側まで続いています。
一条通を北限とする平安京の範囲からは北に外れ当時は洛外でしたが、時期は不明なものの後に市街地が北東へ拡大したことにより通りが作られ、中世には「北小路」と呼ばれていたといい、更に室町時代には烏丸今出川の西側一帯には室町幕府の「花の御所」が作られてその政治の中心とされた場所であり、その後、安土桃山時代に豊臣秀吉が「御土居」を造成した際にはその内側にあって洛中とされています。
この点「今出川」の名前は鴨川分流の「今出川」という名前の川が烏丸通の1つ東の東洞院通から東京極大路、現在の寺町通付近まで通りに沿って流れていたことに由来しているといい、大正時代の初めころまで残されていたものの、明治末期からの京都市三大事業の計画を受けた1917年(大正6年)の京都市電開設のための道路の拡幅工事によってその姿を消したといいます。
その後今出川通は烏丸通～千本通間において拡幅および市電今出川線の敷設が行われた後、順次延伸されて現在の長さとなったといい、このうち鴨川から東の区間は「東今出川通」とも呼ばれています。
