京都市下京区観喜寺町、京都駅の西側に整備された梅小路公園の西隣にある「鉄道」に関する歴史・技術・文化などを総合的に紹介する博物館。
管理運営はJR西日本(西日本旅客鉄道)および公益財団法人交通文化振興財団。公式キャラクターはツバメをモチーフとした「ウメテツ」。
前身の「梅小路蒸気機関車館(うめこうじじょうききかんしゃかん)」は1968年(昭和43年)3月に日本の鉄道輸送を1世紀にわたって支え続けた蒸気機関車が1960年代後半以降に急速に姿を消していくことに対し、これを貴重な産業文化財と位置づけ、動態保存を目的とした施設を設置することが国鉄の常務会で決定したのを受け、周辺に集客力の大きい名所旧跡を有し運転可能な蒸気機関の路線があるなどの理由から、日本有数の観光地・京都の玄関口である京都駅のすぐそばにある車両基地「梅小路機関区(現在の梅小路運転区)」に白羽の矢が立ち、1972年(昭和47年)10月10日に蒸気機関車専門の鉄道博物館として開館されました。
その後、1987年(昭和62年)の国鉄の分割民営化によってJR西日本に承継されたのを経て、1997年(平成9年)7月には「旧二条駅舎」が移転されるとともに蒸気機関車館もリニューアルオープンされています。
その見どころは、主に旧梅小路機関区の「扇形庫(扇形車庫)」および「転車台」を活用した「蒸気機関車展示館」と、「旧二条駅舎」を移築・復元した「資料展示館」などから構成。
このうち「扇形車庫」は1914年(大正3年)に建設された日本最古の鉄筋コンクリート造の車庫で、2004年(平成16年)に国指定の重要文化財ならびに土木学会選奨土木遺産に、また2006年(平成18年)にはJR西日本が指定する準鉄道記念物、更に、2019年(令和元年)には日本機械学会により機械遺産にも認定された、貴重な鉄道遺産の一つです。
この点、蒸気機関車は運転台が一方向にしかなく、終着駅に到着すると車両の向きを転向させる必要があるため、この際に重宝がられたのが「転車台」と呼ばれるターンテーブルと、転車台を活用して効率よく機関車を収納させるための「扇形車庫」で、蒸気機関車の全盛期には広く普及していたといい、扇形にSL車両がずらりと並ぶ様子や転車台に乗せられた蒸気機関車がダイナミックに回転しながら向きを変える姿はまさに壮観です。
他方「旧二条駅舎」は1904年(明治37年)に当時の京都鉄道が本社社屋を兼ねて建設した日本現存最古の木造2階建和風駅舎で、景観に配慮しながら平安神宮を模して造られたといい、京都鉄道が1907年(明治40年)に国有化された後は国鉄、国鉄の民営化の後はJR西日本の駅舎として利用され、1996年(平成8年)4月には京都市の指定有形文化財、2006年(平成18年)にはJR西日本が指定する準鉄道記念物に指定されています。
その後、JR山陰本線(嵯峨野線)の二条~花園駅間が高架化されるのに伴って1996年(平成8年)に駅舎としての役目を終え、1997年(平成9年)に梅小路蒸気機関車館の本館敷地内に移築・復元され、同館の玄関口として使用されるとともに、内部は切符売り場などの古き良き景観を残しつつ、資料展示館として活用されました。
この他にも館内にある片道500mの展示運転線を使用し、蒸気機関車が煙を上げながら2両の客車を牽引して往復するSL列車「SLスチーム号」は、鉄道ファンのみならず家族連れにも高い人気を誇ります。
この蒸気機関車館とは別に、関西には当時の国鉄(現在のJR)が前年に開通した大阪環状線の開通記念事業として1962年(昭和37年)に開館した「交通科学博物館」が大阪の大阪環状線・弁天町駅付近にありました。
しかし施設や設備の老朽化に加えて場所が手狭になったこともあり、2016年を目途に梅小路蒸気機関車館を拡張する形で新たな鉄道博物館を建設することが決まります。
そしてこれを受けて大阪の交通科学博物館は2014年(平成26年)4月6日をもって閉館となり、また梅小路蒸気機関車館の方も鉄道博物館の開館準備のために2015年(平成27年)8月30日をもって一旦閉館されることとなります。
かくして2016年(平成28年)4月29日、閉館した交通科学博物館の収蔵物の一部と梅小路蒸気機関車館の収蔵物を展示し、梅小路蒸気機関車館を拡張・リニューアルする形で再オープンされたのが現在の「京都鉄道博物館」です。
博物館として鉄道を中心とした分野における歴史的・学術的に価値のある資料を継続的に収集・整理・保管するとともに、それらの資料を学術的・教育的に役立てられるよう調査・研究に活用するとともに、誰もが楽しみながら「鉄道」について学ぶことができるようにテーマごとにわかりやすく展示することで社会教育施設としての役割も担っています。
まず1階部分には、梅小路蒸気機関車館時代にもあった国の重要文化財にも指定されている「扇形車庫」と「転車台」や、現役時代は日本最古級の木造駅舎といわれ京都市指定有形文化財に指定された「旧二条駅舎」、本物のSL蒸気機関車が牽引する客車に体験乗車することができる「SLスチーム号」が健在。
そしてこれに加えて目玉ともいえるのが、入口をはいってすぐのエントランスホールと本館をつなぐ全長約100mの「プロムナード」や吹き抜けとなっている「本館1階」「トワイライトプラザ」に展示されている「蒸気機関車から新幹線まで」貴重な実物車両の展示です。
梅小路蒸気機関車館時代の車両展示は主に扇形車庫に収められた20両の蒸気機関車がメインでしたが、これに加えて1964年(昭和39年)に製造され東海道新幹線の開業時から活躍し団子っ鼻の愛嬌のある先頭部で愛された「0系新幹線」電車の第1号車や、時速300kmでの営業運転を実現しギネスブックにも掲載された「500系新幹線」電車、漫画「銀河鉄道999」に登場する「999号」のモデルになったともいわれ戦後の特急列車を牽引した国鉄最大の「C62形蒸気機関車」など、歴史的な価値を持つ車両が収蔵されていて、その数は何と総勢53両だということです。
次に本館の2階には「鉄道ジオラマ」「運転シミュレータ」などの体験展示が満載なほか、キッズパークや休憩所、JR線の線路を窓から一望しながら飲食が楽しめるレストランなども整備され、家族で楽しめるようになっています。
このうち「ジオラマコーナー」は幅約30m、奥行約10mの日本最大級の約300平方メートルの広さを持ち、実物車両の1/80のスケールの鉄道模型はJR西日本の自社車両のみならず、JR東日本やJR貨物といった姉妹会社や近鉄・阪急・南海・京阪・名鉄など私鉄各社の車両や、旧国鉄時代の車両も配置されていて、一日の鉄道運行の様子を職員のライブ実況付きで楽しむことができるという、鉄道ファンにはたまらない展示となっています。
また「運転シミュレータ」は、実際の車両と同じように発車から停車まで駅から駅までの運転操作を体験することができるだけでなく、運転士の制服も用意されていてまさに運転士の気分が味わえると好評です。
そして3階には、ギャラリーや図書資料館、ホールなどがあるほか、東寺の五重塔や比叡山や大文字山などワイドな京都市街地の眺望が広がるのみならず線路を走る新幹線や在来線の電車が行き交う様子も眺められる絶好のビューポイントでもある屋外展望デッキ「スカイテラス」があり、またギャラリーのある通路からは館内全体の景色を見渡すこともでき、壮観な景色が楽しめるようになっています。
その他にも「地域と歩む鉄道文化拠点」を基本コンセプトに様々な活動に取り組んでおり、鉄道の総合博物館として鉄道の安全性や技術を伝える場の創出、博物館職員によるガイドツアー、JR西日本社員が博物館内で行うワークショップなどを通じて、鉄道ファンだけでなく幅広い人々が楽しめ、鉄道についてより深く理解できるような様々な文化活動を実施しているといいます。