京都市左京区鞍馬本町、京都市北部に位置する鞍馬にある叡山鞍馬線の鞍馬駅を降りてすぐのところにある鞍馬寺の境内に参詣者の利便を図る目的で開設されたケーブルカー。
運営者は宗教法人鞍馬寺で、鉄道事業法の許可を受けたものとしては国内で唯一の宗教法人が運営する鉄道事業だといいます。
また叡山電鉄鞍馬駅に近い普明殿にある「山門駅」から標高584mの鞍馬山の中腹にある鞍馬寺の本殿金堂にほど近い多宝塔礼堂にある「多宝塔駅」までの191m(約0.2km)、高低差89mを約2分で結んでおり、特殊鉄道を含む営業距離は日本一短い鉄道でもあります。
1957年(昭和32年)1月1日に参詣者の利便性向上を目的に開業したのがはじまりで、車両は幼少期に鞍馬寺で修行した源義経の幼名・牛若丸にちなんで「牛若號」と名付けられ、その後1976年(昭和51年)1月に2代目車両「牛若号II」、1996年(平成8年)8月8日には大幅なシステム変更とともに3代目車両「牛若号III」が運行を開始した後、現在運営されているのは2016年(平成28年)5月20日から運行されている4代目車両「牛若号IV」です。
運営者の鞍馬寺によると、自然の中を歩いて参拝してこそ、鞍馬寺の本尊であり、自然の力の根源である「尊天」をより強く感じることができるとして、歩くことが可能な参拝者はケーブルカーを使用せずに参道を歩くことを推奨しており、ケーブルは足の弱い参拝者や年配の参拝者が少しでも楽に参拝できるように敷設されたもので、営利事業ではないといいます。
そのため運賃を徴収する形ではなく、鞍馬山内の堂舎維持に協力した返礼としてケーブルを利用してもらうという趣旨になっており、諸堂維持の寄付金を事実上の運賃として事実上の乗車券である「御寄進票」という切符で入場し、御寄進票は回収されてしまいますが、乗車記念として花びらを持ち帰ることができるシステムになっています。
通常は15分間隔の運行で山門駅を毎時10・25・40・55分に出発し、車両は1両のみの単線で行き違いの設備はなく、多宝塔駅はその3分後に折り返しで発車しますが、多客時はピストン運転を行う場合もあり、始発は山門駅発が朝の8時18分、最終は多宝塔駅発が夕方の16時50分ですが、6月から8月までは30分遅い17時20分に延長されます。
なお駅舎は麓の山門駅は「普明殿」という1992年(平成4年)に完成した堂が駅舎を兼ねており、また山頂の多宝塔駅は「多宝塔礼堂」というケーブルカー開通当時に建てられた堂が駅舎を兼ねています。
このためケーブルを利用すると普明殿から多宝塔礼堂の間にある由岐神社や清少納言が「枕草子」にて「近うて遠きもの、鞍馬のつづらをりといふ道」と記したことで有名な九十九折の参道やその途中にある牛若丸ゆかりのスポットなどの史跡や石碑などは全て目にすることができないため、往復のいずれかにケーブルを利用し、いずれかを徒歩で向かうという参拝方法もあります。
また本殿金堂から奥の院を通り貴船神社前の鞍馬寺の西門から出る場合についても帰りにケーブルを利用することはできなくなるので注意が必要です。