京都府京都市上京区日暮通椹木町下ル北伊勢屋町、世界遺産・二条城の北側、日暮通沿いにある造り酒屋で、洛中に唯一残る日本酒の蔵元。
この点、元々上京の地は「出水」という地名が残っているとおり良質で豊富な地下水に恵まれた場所で、酒蔵のある一帯は平安時代には「内酒殿(うちのさけどの)」という内裏に納める酒を醸造する役所が置かれた場所であり、京の酒造りの起源の地であるといえ、また室町時代には全国からの献上米が三条室町の米揚に集められ、米と水という酒造りに必要な条件が揃う中、幕府も重要な財源である酒税の徴収のために酒造りを推奨し、このため室町中期には300軒余りの蔵元が集まる日本最大の酒の生産地であったといいます。
佐々木酒造は1893年(明治26年)、初代・佐々木次郎吉が当時は酒造りが盛んでであったという洛中の現在地にて創業。
昔の資料などによれば創業当時にもまだ131軒もの蔵元があり、伏見よりも洛中の方が蔵元の数も生産量も多かった時代でしたが、その後は伏見の地の東への運搬上の利便さや、都市化が進む洛中において規模の大きい伏見の蔵元との競争力の差などから徐々に数が減ってゆき、大正時代には半減し、更に統合や伏見・滋賀への移転などによって姿を消し、現在では佐々木酒造が洛中において唯一残る蔵元となっています。
その佐々木酒造の店の立地する場所は関白・豊臣秀吉の邸宅「聚楽第」のあったと伝わる場所の南端にあたり、その聚楽第にて茶人・千利休が茶の湯にも使ったといわれる「金明水・銀明水」の水脈を仕込み水とし、京の地酒を「洛中伝承」の手造りの技法にて醸造し続けています。
とりわけ米の旨みを大切にするため濾過や脱色などの処理を差し控え、ベテラン杜氏の手によってじっくりと育てられた自然のままの風味にこだわった清酒造りを心がけているといい、その一方で伝統ある酒造りを継承しつつも、新しい技術も積極的に取り入れながら、さらなる品質向上にも取り組んでいるといいます。
主な商品としては、まず看板商品である「聚楽第」は豊臣秀吉が造営した邸宅の名を冠した最高級品質の純米大吟醸で、果実のような吟醸香と透明感のあるすっきりした気品のある味わいが特徴です。
また祇園の料亭で好評だという大吟醸「古都」は小説家・川端康成が「この酒の風味こそ京の味」と称賛し、自らの小説の題名を与えられるとともに、ラベルの文字も川端康成の揮毫によるものといいます。
そしてその他にも西陣呼称550年に合わせて掛布に西陣織の金らんを使用した特別純米酒「西陣」や洛中に伝わる童歌にちなんで命名されたというやや辛口タイプで燗酒にも最適な「まるたけえびす」、そして京都の米と京都の酵母、そして京都の水で仕込まれたという100%京の酒「京生粋」など、京都らしい商品が評判となっています。
近年は俳優・佐々木蔵之介の実家としても有名となり、過去には実家をロケ地として自動車のCMに父親と共に出演したこともあるほか、店内には出演したドラマや映画などのポスターも貼られています。
現在の4代目社長・佐々木晃はその蔵之介の弟にあたり、本来家業を継ぐ予定であった兄に代わって25歳で蔵入りし、現在は新しい酵母の開発や各種タイアップ・コラボ商品など、時代のニーズに合わせた商品づくりにも取り組むほか、日本酒講座やイベントなどを通じて新たな日本酒ファンを増やすことにも尽力しています。