京都府八幡市上津屋宮前川端と対岸の久御山町佐山を結ぶ、淀川水系の支流をなす一級河川・木津川に架かる歩行者専用の木造橋。
全長356.5m、幅3.3mの木造では日本最長級の橋で、京都府道281号八幡城陽線の一部に指定されており、正式名は「府道八幡城陽線 上津屋橋(こうづやばし)」。
両岸一帯は江戸時代から明治の中頃までは「上津屋村」という一つの農村で、住民は渡し船で木津川を往来したり、八幡側の石清水八幡宮や京田辺市大住の虚空蔵参りなどに利用されていましたが、船での渡河は利便性が悪かったことから橋を架けることを検討。しかし永久橋が予算の都合上難しかったことから低予算で架けられるとの理由もあって導入されたのがいわゆる「流れ橋(ながればし)」という架橋方法でした。
この点、一般的に橋は自然災害に耐えられるよう、鋼や石、コンクリートなど、耐久性の高い構造や材料を用いて造られるのが通常ですが、流れ橋は洪水の際には水の流れに逆らわずに流されることを想定して架けられる形式の橋で、増水時の抵抗を少なくするために川の水位が橋板(橋桁)に達すると橋脚を残して橋桁だけが浮き上がり8つに分かれて流れるように設計されていることからこの通称で呼ばれています。
そして水が引けばワイヤーロープに繋がれた橋板を手繰り寄せて再び橋脚に乗せればすぐに元の橋に戻せる仕組みとなっていて、これにより橋にとって最も重要な部分である橋脚全体の損傷を軽減、流出を防ぐことができ、しかも永久橋の建設に比べて少ない予算で架橋することができるのが大きなメリットで、元々あった府営の渡船場が1951年(昭和26年)に廃止され、1953年(昭和28年)に架橋されて以降、とりわけ1966年(昭和41年)に枚方バイパス(現国道1号)にかかる木津川大橋が完成して以降は歩行者と自転車の専用橋となり、現在に至るまで地域住民の生活道路として重要な役割を担っています。
それに加えてこれほど長い木造のものは珍しいという「日本百名橋」の一つにも選出されている情緒ある橋と、橋の周辺に広がるコンクリートの護岸や民家、電柱などのない、昔ながらの茶畑ののどかな風景は、テレビのドラマや映画の撮影などにも利用されることが多く、とりわけ時代劇においては大覚寺とともにロケの定番といえる場所として時代劇ファンにはお馴染みの橋となっています。
また夕暮れ時には夕日と橋とのコントラストの美しい景色が楽しめることから、その絶景を収めようと多くのカメラマンが集まるなど、地域観光にも多大な貢献をしており、橋のそばにある八幡の食を味わえる和風レストランや物販コーナー、ゆったりくつろげる入浴施設「四季の湯」などが整備された「四季彩館」と合わせて近隣の観光拠点となっています。
その反面、川の増水が起きる度に橋げたが流され、その都度修復・改良工事が繰り返されており、その数は1953年(昭和28年)の架橋以来20回以上を数え、とりわけ近年は地球温暖化による大雨の影響で流出が頻発するようになり、復旧費用もかさんで大きな問題となったことから、一時は永久橋への建て替えなども検討。
しかし地域観光への貢献度の高さや、2010年(平成22年)に流れ橋にほど近い場所に第二京阪道路の新木津川大橋が開通したため、橋が流され際に迂回が容易になり生活への影響が少なくなったこともあり、約8割が従来の景観を維持したままの復旧を望む声であったため、2016年(平成28年)3月に従来の趣ある木造橋の風情を保ちながらも、新工法が導入され流れにくい構造を取り入れた新しい橋に生まれ変わっています。
直近では2019年10月12日の台風19号の影響により流出し、復旧のため2019年11月現在、橋は通行止めとなっています。