京都市中京区高倉通三条上ル東片町、烏丸御池やや南東の三条高倉交差点角にある歴史博物館で、「京都」の歴史と文化の紹介を主目的として考古・民俗史料や美術工芸作品、映像などを展示・公開する総合的な文化施設。運営は財団法人京都文化財団。
1988年(昭和63年)10月、安建都1200年記念事業の一環で、千年余の都として日本文化の形成に大きな役割を果たした京都の歴史と文化をわかりやすく紹介することで京都の優れた伝統文化に触れるとともに、新しい文化の創造力を呼び起こすため、京都府立総合資料館などの機能を統合する形で開館しました。
その後、2011年(平成23年)7月に「国民文化祭・京都2011」の開催を控えて「ほんまもん」を体感できる博物館として全面リニューアルがなされ現在に至っています。
建物は主に三条高倉交差点角に建つ赤レンガ造の建物と、その北隣に新たに建てられた地上7階地下1階建ての鉄筋コンクリート造の建物の2つで構成されていて、前者が別館、後者が本館として使用されています。
まず本館4階の「特別展示室」では年間を通じて斬新で魅力のある企画による多彩な「特別展」が開催されているほか、2・3階の「総合展示室」では京都の歴史や美術工芸を幅広く展示。
このうち2階の展示室は「京の至宝と文化」「京のまつり」「京の歴史」の3つのゾーンに分けられ、平安から明治・大正期までの京都の歴史の流れや祭りについて模型や資料を使って分かりやすく紹介されており、また大画面に京都の街が移り変わっていく様子を再現映像で映し出す「絵巻回廊」も見ものです。
その他にも京都日本画家協会の作家の作品や、京都御所近くにある冷泉家の蔵に蓄積されてきた勅撰集や私家集など、京都ゆかりの優れた芸術作品や美術工芸品、歴史資料などを折々の企画に合わせて紹介するほか、、3階にある「フィルムシアター」では京都府が所蔵するモノクロの日本の古典・名作映画の上映を行うほか、映画の街でもあった京都にまつわる映画関連の資料の展示も行われています。
また展示の他にも本館1階にはフリーゾーンとして江戸末期の京の町家格子の町並みを再現した京言葉で路地のことを指す「ろうじ」の名前のついた商業施設で京都の老舗の飲食店やお土産物屋などの店が軒を連ねる「ろうじ店舗」や、アートに関連する様々なグッズや京の伝統工芸品等を販売する「ミュージアムショップ」があり、食事やショッピングを気軽に楽しむことができます。
一方、本館の南側、三条通に面する赤れんが造りの「別館」は、1906年(明治39年)に日本銀行本店や東京駅も手掛けた建築家・辰野金吾とその弟子・長野宇平治の設計で「日本銀行京都支店」として建造された後、1965年(昭和40年)に河原町二条に移転されるまで使用されていました。
その後1968年(昭和43年)より私立の博物館「平安博物館」として利用されていましたが、当博物館の開設にあたって財団法人古代学協会から京都府に寄贈され、別館展示室として活用することとなったもので、明治期を代表する近代洋風建築として1969年(昭和44年)に国の重要文化財に指定されています。
ちなみに建物が面する「三条通」は、鴨川に架かる三条大橋が江戸時代には東海道の西の起点とされるなど当時はもっとも栄えていた通りで、明治期に入ってからも商業・金融の中心地として集書院、郵便局、商店、銀行、保険会社などの建物が欧米から取り入れた洋風の建築技術を使って数多く建てられました。
1912年(明治45年)に四条通や烏丸通が拡幅されたのを受けて、メインストリートとしての地位は譲ることとなりましたが、それがかえって多くの歴史的建造物を残すことになり、現在も多くの洋風建築が明治期の近代建築として文化財に指定・登録されていて、また三条通の新町通から寺町通の一帯についても京都市の「界わい景観整備地区」に指定されています。
そして「別館」は元々銀行として建造されたこともあってか、美しく頑丈なレンガ造の構造に入口には重厚な雰囲気を醸し出す鉄の扉が設置され、内部は白壁に木製の格天井や手すりなどがレトロな雰囲気を醸し出しており、銀行として使用されていた当時の面影が色濃く残されています。
当博物館のシンボル的存在として公開され、当時所長室や応接室であった場所にはギャラリーやショップが入居し、営業室であった場所はホールとなって展示会や音楽会、コンサートの会場などとしても幅広く活用されていて、また中庭に面する旧金庫室は改修されて京都の老舗喫茶店の「前田珈琲 文博店」が営業を行っています。