京都市伏見区竹田鳥羽殿町に本社を置く電子部品、ファインセラミック部品、半導体部品、情報機器、通信機器、太陽電池、セラミック、宝飾、医療用製品などを製造する大手電子部品・電気機器メーカー。
ブランドシンボルは、京セラのイニシャルである「K」がセラミックスの「C」を大きく包み込む意匠で、より広い領域への可能性を求めて挑戦し、未来へはばたく姿勢をシンボライズしたものだといいます。
創業者の稲盛和夫(いなもりかずお 1932- )は、1932年(昭和7年)1月に鹿児島市で生まれ、鹿児島大学工学部で有機化学を専攻し1955年(昭和30年)に卒業。卒業後は京都にて碍子メーカーの松風工業に就職するも3年後に退社を余儀なくされますが、自伝によれば京セラの商品の基となるセラミックスの研究はこの会社で培われたといいます。
その後1959年(昭和34年)4月に京都市中京区西ノ京原町、現在の地下鉄西大路御池駅の北東付近にて、ファインセラミックスの専門メーカー「京都セラミック株式会社」(1982年に「京セラ株式会社」に商号変更)を設立したのがはじまり。
知人より出資を得た資本金300万円で、創業時の従業員はわずか28人、主にブラウン管に使われていた絶縁部品を作る小さな町工場からのスタートでしたが、以来ファインセラミックスに関する技術開発力を武器に、ICパッケージをはじめとする各種電子部品や産業用部品のメーカーとして急成長させ、現在では半導体や通信機器、情報機器、宝飾品などにも製品群を持つ世界有数のグローバル企業へと成長を遂げています。
この点「セラミック(ceramic)」とは、ギリシャ語で粘土を焼き固めたものを意味する「keramos」を語源とし、狭義には陶磁器を指す言葉ですが、広義では窯業製品の総称として用いられ、無機物を加熱処理し焼き固めた焼結体を指し、古くは土器に始まり、時代を経て陶器や磁器、そしてガラス、セメントなども代表格の一つです。
セラミックの特徴としては硬くて耐熱性、耐食性、電気絶縁性などに優れている点が挙げられ、陶石、長石、粘土などの天然の鉱物を用いて作られますが、「ファインセラミックス」は天然原料ではなく高純度に精製された原料を用い、精密に調整された化学組成と「十分に制御された製造プロセスによってつくられた高精密なセラミックスのことをいい、従来に比べ高度な機能を持つことから、医療用や電子部品の材料として、液晶パネルや半導体、自動車のエンジン、産業用機械など幅広い分野で利用されており、新材料革命をもたらしたともいわれています。
ちなみに稲盛はこの他にも1984年(昭和59年)に電気通信事業の自由化に即応する形で「DDI」を設立し、2000年10月にKDD、IDOとの合併により「KDDI」を設立。NTTの独占状態であった日本の通信業界に風穴を空け、2010年(平成22年)には経営破綻に陥った日本航空(JAL)再建のために会長として着任して成功に導くなど、類まれな経営手腕はもはや伝説となっています。
一方で社会貢献活動にも熱心に取り組んでおり、1984年(昭和59年)には私財を投じて「稲盛財団」を設立して国際賞「京都賞」を創設。毎年11月に先端技術、基礎科学、思想・芸術の3部門で人類社会の進歩発展に功績のあった人物を顕彰するほか、若い経営者が集まる経営塾「盛和塾」を主宰し塾長として経営者の育成にも心血を注いでいます。
本社は中京区西ノ京原町から1972年(昭和47年)7月に京都市山科区に移転されたのを経て、1998年(平成10年)8月に現在地の京都市伏見区竹田鳥羽殿町に移転。
新しく建造された本社ビルは地上20階、地下3階建ての鉄筋コンクリート造の建物で、高さ94.82mの超高層ビルは周辺一帯においては飛び抜けて高く、一帯のランドマーク的存在にもなっています。
そしてその本社ビル内には地域振興と芸術文化やセラミックス技術の発展への寄与を目的に複数の文化施設が開設されており、一般公開されています。
本社ビル2Fの「京セラファインセラミック館」は創業以来開発してきた京セラのファインセラミックの特徴や用途、技術開発の歴史などを開発製品とともに紹介・展示する資料館で、「ショールーム」では様々な分野で貢献する京セラグループの最新製品やサービスを展示し、本社ビル1Fの「京セラギャラリー」ではピカソの銅版画、現代日本画、中国清朝の乾隆ガラスを常設展示するほか、年に1~2回の割合で特別展を開催しており、更に別館の「稲盛ライブラリー」では京セラ創業者・稲盛和夫の人生哲学や経営哲学を中心に、技術者、経営者としての足跡や様々な社会活動を所縁の品々とともに紹介しています。
またイベントとしては毎年夏には隣接するパルスプラザでの「京セラ夏祭り」のほか、冬には20階建て高さ86mの本社ビルの壁面に巨大クリスマスツリーを映し出す「京セラ本社イルミネーション」を実施しており、冬の京都の風物詩の一つとなっています。
文化やスポーツ振興にも力を入れており、代表的なものとしては1994年(平成6年)1月に京セラを中心とする21社により設立されたJリーグ所属のサッカーチーム「京都パープルサンガ(現在の京都サンガFC)」のトップスポンサーを務め、2020年(令和2年)に京都府亀岡市に竣工した新スタジアム「京都スタジアム」の命名権を取得しており「サンガスタジアム by KYOCERA 」のスタジアム名でも親しまれています。
また2006年(平成18年)には大阪市にある「大阪ドーム」の命名権を取得し、2006年7月1日からは「京セラドーム大阪」の名前で呼ばれるようになっており、現在はプロ野球球団のオリックスバッファローズの本拠地および甲子園使用時の阪神タイガースの代替ホーム球場として使用されているほか、各種イベントやコンサートなどにも使用されています。
更に京都市の岡崎にある「京都市美術館」のニューアルに伴ってこちらも命名権を取得、2020年(令和2年)3月21日の再オープンに先立ち、2019年からは「京都市京セラ美術館」の呼称で新たな歴史をスタートさせています。