嵐電嵐山本線の「西院駅(さいえき)」は京都市中京区壬生仙念町、四条通と西大路通の交差する「西大路四条」交差点の東側にある京福電鉄(嵐電)の嵐山線の駅で、2面2線ホームの地上駅。
一方、阪急京都本線の「西院駅(さいいんえき)」は京都市右京区西院高山寺町、西大路四条交差点の地下にある相対式2面2線ホームの地下駅。駅スタンプは西院トンネル。
平安初期の833年(天長10年)2月28日、平安遷都を行った第50代・桓武天皇の第7皇子である第53代・淳和天皇(じゅんなてんのう 786-840)は嵯峨天皇の第2皇子で甥にあたる第54代・仁明天皇に皇位を譲り、退位に伴って離宮「淳和院」に移りました。
この「淳和院」があったのが駅にほど近い、西大路四条交差点から四条通を180mあまり西へ進んだ佐井通(春日通)との交差点を北へ100mほど上がった場所で、御所の方角から見て西側にあった離宮であることから別名を「西院(さいいん)」といい、この地域の地名の由来にもなっています。
またその佐井通(春日通)は平安京創設当初は「佐比大路」と呼ばれていたことから一帯は「西院(さい)」とも呼ばれ、当時この付近は川が流れて広い河原で、風葬の地と定められていたこともあって「西院の河原(さいのかわら)」と呼ばれていたといい、これが地蔵和讃(じぞうわさん)の「賽の河原」として信仰を集めたと伝えられていて、現在の正式な地名は「さいいん」だそうですが、中世には「さい」が一般的で、このこともあって嵐電の駅の方は「さいえき」の読み方を用いているようです。
嵐電の「西院駅」は1910年(明治43年)3月25日に嵐山電車軌道(現在の京福電鉄)の京都(現・四条大宮駅)~嵐山間の開通に伴い「西院駅」として開業した後、1918年(大正7年)に会社合併によって電力会社・京都電燈の経営する嵐山電鉄の駅となりますが、1942年(昭和17年)に戦時統制によって京都電燈が解散されるのを受け、同社の京都および福井での鉄道事業を分離・引き継ぐために「京福電気鉄道(嵐電)」が設立されると、路線譲渡により同社の駅となり現在に至っています。
西大路四条交差点の東側に四条通を挟んで北側に嵐山・帷子ノ辻方面、南側に四条大宮方面のホームがあり、それぞれが阪急の北改札口を南改札口に直結しています。
また四条通と交差する部分には踏切が設けられていますが、踏切に隣接して西院駅があるため電車がいったん停車しスピードを出して通過することがないためか、京阪神地区で唯一現存しているという遮断機がない珍しい形式の踏切となっています。
その他に駅より北へ約50m進んだところには京福電気鉄道の西院車庫が設置されていて、早朝・深夜を中心に当駅を始発・終着とする便も設定されています。
もう一方の阪急の「西院駅」は1928年(昭和3年)11月1日、新京阪鉄道の新京阪線が高槻町駅(現在の高槻市駅)から当駅まで延伸されるのに伴い、その終着駅として「京都西院駅」の駅名で開業したのがはじまり。
その後、1930年(昭和5年)9月に会社合併により京阪電気鉄道(現在の京阪の前身)の駅となった後、1931年(昭和6年)に新京阪線が四条大宮(現在の阪急大宮駅)まで更に延伸されたのに伴ってわずか3年足らずで中間駅となり「京都西院駅」から「西院駅」と改称。
その後1943年(昭和18年)に戦時中の企業統合政策によって京阪電気鉄道と京阪神急行電鉄(現在の阪急)と合併したのを経て、戦後の1949年(昭和24年)に京阪神急行電鉄(阪急)から京阪電気鉄道(京阪)が再度分離した際に新京阪線は京阪神急行電鉄(阪急)の路線となり、京都本線と改称されるとその所属駅となり現在に至っています。
ちなみに大宮駅~西院駅間については、日本国内では宮城電気鉄道仙台駅、東京地下鉄道(現在の東京メトロ銀座線)に次ぐ、近畿初の地下線であり、更には架空集電方式による地下鉄道は本邦初であることから、地下線やホームの構造物は土木学会の「選奨土木遺産」のランクAに指定されている歴史的建造物となっています。
この点、西院駅の南西、佐井通(春日通)と綾小路通の交差点の北西側にある阪急京都本線の電車が地上と地下を出入りする「西院トンネル」の入口上部には、天と人とが力を合わせ偉業を成し遂げたことを意味するという地下路線の開通を記念する「天人併其功」の扁額と扁額の下にブロンズの鷲のレリーフが掲げられており、運行の安全を見守っています。
また嵐電と阪急の2社の鉄道路線が乗り入れており、大阪方面への通勤客と金閣寺方面への観光客、そして立命館大学といった学校への通学客が乗換駅として利用することが多く、京都市の西の交通の起点でもあることから近年、国土交通省の鉄道駅総合改善事業における「形成計画事業」として京都市・阪急・京福らの法定協議会「西院駅周辺地域整備協議会」を主体とする駅の改良工事・バリアフリー化が行われています。
この点、2015年(平成27念)から2017年(平成29年)にかけては阪急と嵐電の両駅を直結させる工事が、また2019年(令和元年)には既存の阪急改札口を改修して西大路四条交差点南西角にある「阪急西院駅ビル」を新たに建て替える工事が行われ、より一層利便性の高い駅へと生まれ変わっています。