京都で最も早く紅葉が楽しめる洛西・高雄山の古刹
高野山真言宗遺迹本山。京都で最も見頃の早い紅葉の名所・高雄山にある。平安遷都を指揮した和気清麻呂創建の河内国・神願寺と元々この地にあり弘法大師空海が14年住持を務めた高雄山寺が824年に合併し誕生。
源頼朝像を含む神護寺三像や日本三銘鐘の国宝三絶の鐘などを所蔵。かわらけ投げ発祥の地
神護寺のみどころ (Point in Check)
京都市右京区梅ヶ畑高雄町、市北西部にそびえる標高924mの愛宕山山系の高雄山の中腹に位置する山岳寺院。
高野山真言宗の遺迹本山(ゆいせきほんざん)で、清滝川の北岸、清滝川に架かる高雄橋から長い参道を歩いた先に境内を構えています。
創建は平安初期頃で、造営大夫(最高責任者)として794年の平安遷都にも尽力した有力豪族・和気清麻呂(わけのきよまろ 733-799)の開基。
元々は780~793年頃に和気氏の氏寺として河内国に建立された「神願寺」という寺と、現在の神護寺がある場所に私寺として建立された「高雄山寺」という2つの寺が存在していましたが、824年(天長元年)に河内国・神願寺のあった場所が地勢が穢れているという理由で2つの寺が合併し、現在の「神護寺」という名前に改められ現在に至っています。
ちなみにまだ合併前の「高雄山寺」だった頃には、唐から帰国した弘法大師・空海が、823年に東寺を拝領し拠点とするまでの間、14年にわたって住持を務め真言宗立教の基礎をこの地で築き、また天台宗の祖の伝教大師・最澄も805年に法華経の講義をするなど、仏教の歴史上において大変重要な役割を果たしていることでも知られています。
平安末期には二度の火災に遭い一時衰退しますが、空海ゆかりの寺が荒れていることを知った「平家物語」で有名な文覚(もんがく 1139-1203)の手により再興(中興の祖)。
後に文覚が配流となると、その弟子の上覚に引き継がれ再興は完遂されましたた。
神護寺といえば何といっても秋の紅葉の名所として知られていて、神護寺(高雄)、西明寺(槙尾)、高山寺(栂尾)を合わせた「三尾」は古来より紅葉の名所として知られ、現在も京都でもっとも早く紅葉が楽しめるエリアとして高い人気を集めています。
とりわけ清滝川一帯のカエデが紅葉して真っ赤に色づく光景は、誰もが息を飲む美しさを誇ります。
寺宝も多く伝わっており、伝・平重盛像、伝・源頼朝像、伝・藤原三能像のいわゆる神護寺三像などを筆頭に、平安・鎌倉期の仏像・絵画・書籍を多数所蔵し、その多くが国宝・重要文化財に指定されています。
神護寺の施設案内
アクセス
京都市北西部、愛宕山系の高雄山の中腹に位置しており、付近に鉄道はまったく通っておらず交通手段としては基本はバスか自家用車となります。
ただし人気の高い紅葉の時期は、他の京都の紅葉スポット同様にかなり混雑する上、駐車場も限られているため、バスの利用をおすすめします。
境内
境内の敷地面積は約20万m2(約6万坪)あり、一帯は北山杉の故郷であり東海自然歩道の一部となっているほか、南側には清流・清滝川が流れるなど、豊かな水と緑に囲まれた静かな空間が広がっています。
バス停でバスを降りると、まず下りの石段が清滝川に架かる高雄橋まで続いていきます。
ところが清滝川に架かる高雄橋を渡って参道入口を入ると、今度は一転して400段ともいわれる上りの石段が続く長い参道が待っています。
もっともこの石段を制覇して楼門をくぐって境内へと入れば、その後はそれほどの傾斜はなくゆったりと境内を参拝することができます。
他の京都の寺院同様に「応仁の乱」(1467-77)の戦火に遭い、大師堂を除く全ての建物が焼失しており、現在の堂宇は江戸以降に再建されたもの。
これらの堂宇を巡るのもおすすめですが、是非体験しておきたいのが、名物の「かわらけ投げ」。
眼下に広がる渓谷「錦雲渓(きんうんけい)」に向かって皿を投げれば厄除けになるだけでなく、いい気分転換にもなります。
素焼きの皿は値段も2枚で100円とお手頃な価格で、気軽に参加することができます。
その他、和気清麻呂公墓と文覚上人墓・性仁法親王墓に関しては、どちらもかなり離れた距離にあるため、参拝する人の数も限られていますが、時間と体力に余裕のあれば是非お参りをしたいところです。
周辺
神護寺(高雄)に西明寺(槙尾)、および世界遺産・高山寺(栂尾)を合わせた「三尾」はいずれも紅葉の名所として知られており、合わせて巡るのもおすすめです。
高雄バス停~高雄橋
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高雄バス停(たかおばすてい)
すぐ前にある山本食堂という店の他に売店なども少しはあるが、コンビニのようなものはないので事前準備はしっかりしておく必要。
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石標
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コインロッカー
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高雄観光マップ
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バス停から高雄橋までの道
バスを降りてから高雄橋までは基本的にずっと下りの石段がつづら折り状に続く。この近辺も含めて山間には秋には見事な紅葉の景色が広がる。
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石段
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分岐点
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高雄だんご
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高雄橋(たかおばし)
参道入口手前にある清滝川にかかる朱色の橋。
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清滝川(きよたきがわ)
高雄橋からの川の眺めはなかなかのもの。
参道
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参道入口(さんどういりぐち)
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受付
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下乗石(げじょうせき)
鎌倉時代の「正安元年」(1299年)の銘が刻まれる石碑。下乗石にはここから境内であり特別な聖域であることを示し、参詣者はここで輿や馬などの乗り物から降りるように促す意味があるらしい。
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石段の参道(さんどう)
長い急な石段を15分ほど登る(約400段)、途中には茶店もあるので無理することなくゆっくり登るとよい。
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高雄茶屋(たかおちゃや)
石段の参道の途中、最初に見えてくる茶店。
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参道(さんどう)
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高雄茶屋(たかおちゃや)
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地蔵
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硯石亭(すずりいしてい)
石段の参道の途中、2番目に見えてくる茶店。この店のすぐ横に硯石がある。
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硯石(すずりいし)
約400段の石段が続く参道の途中にある(ここまで来ると残り100段)、真言宗の祖で三筆に挙げられるほど筆の名手でもあったことで知られる弘法大師・空海が墨を擦ったと伝わる。
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硯石亭 茶席の紅葉
硯石亭の前と硯石の横を通り、更に門まで続く参道を少し上がった所から見下ろせる光景。座敷の屋根に落ちもみじが積み重なり、何ともいえない幻想的な光景を生み出している。
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石段
楼門~金堂
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楼門(ろうもん)(唐門)
1623年の再建。脇間には外から見て左側に増長天像、右側に持国天像を配置
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増長天像(ぞうちょうてんぞう)
外側から見て楼門の左側。
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持国天像(じこくてんぞう)
外側から見て楼門の右側。
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拝観受付(はいかんうけつけ)
楼門の手前左側にある。
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本坊(ほんぼう)
楼門の手前右側にある。書院などへ通じていると思われるが非公開のため一般客は立ち入り不可。
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書院(しょいん)
非公開。楼門の右横にある本坊の入口から門の奥をのぞくとチラッと姿が見える。更に奥にある茶室に関しては残念ながら見ることはできない模様。
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参道
楼門をくぐってすぐの神護寺境内の眺め。
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境内図(けいだいず)
楼門をくぐってすぐ左の所にある。
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WC
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唐門(からもん)
楼門をくぐって右手に最初に見えてくる。奥には書院と茶室があるがともに非公開。
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唐門前のしだれ桜
書院へ通じる唐門の右手前。
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宝蔵(ほうぞう)
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和気公霊廟(わけこうれいびょう)
1934年建造。本寺の開基であり794年の平安京遷都を指揮した和気清麻呂公を祀る。
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和気公墓道碑
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鐘楼(しょうろう)
1623年の再建。梵鐘は875年の鋳造で国宝、詞書を橘広相、八韻の銘一首を菅原是善、書を藤原敏行が担当と当時の三絶により銘が刻まれたことから「三絶の鐘」と呼ばれ、宇治の平等院と滋賀県にある園城寺(三井寺)の鐘とともに日本三名鐘の一つに挙げられる(神護寺を外して東大寺を入れる場合もあるらしい)。
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明王堂(みょうおうどう)
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五大堂(ごだいどう)
1623年の再建。不動明王をはじめとする五大明王像を安置。
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毘沙門堂(びしゃもんどう)
1623年建築。金堂が建築される前は本堂だった。毘沙門天立像(重文)を安置。
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大師堂(だいしどう)
重要文化財。空海の住房だった納涼房を復興したもの。板彫弘法大師像(重文)を安置。この大師堂以外の建物はすべて応仁の乱で焼失し、江戸時代に再建されたもの。
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石造転法輪
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金堂へ向かう石段
この一帯も秋には紅葉が見事である。
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金堂(こんどう)
1934年再建と比較的新しい。本尊の薬師如来立像(国宝)を安置。無病息災・鎮護国家を祈念。
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広場からの眺望
この金堂へ続く石段の上から五大堂と毘沙門堂を見下ろす景色は雑誌等でもよく使用され一番の紅葉撮影スポット。
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不動明王像
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多宝塔(たほうとう)
1934年の再建。五大虚空菩薩像(国宝)を安置
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文覚上人墓・性仁法親王墓への道
多宝塔の右横にある小道を奥へ進んでいくと、文覚上人墓・性仁法親王墓へ向かうことができる。
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和気清麻呂公墓(わけのきよまろこうはか)
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文覚上人墓(もんがくしょうにんはか)
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性仁法親王墓(しょうにんほっしんのうはか)
地蔵院
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道標
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道標
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竜王堂(りゅうおうどう)
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池
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閼伽井(あかい)
閼伽は仏教用語で仏様にお供えする水のこと。この井戸は14年にわたりこのお寺で住持を務めた弘法大師・空海が、灌頂の浄水として使用するため自ら掘ったと伝えられている。
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地蔵院近道
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能村登四郎歌碑(のむらとしろうかひ)
左側の石碑には俳人・能村登四郎(1911-2001)の詠んだ「初紅葉せる羞ひを杉囲み」の歌が刻まれる。右側については不明。この近辺も秋には紅葉が美しい。
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地蔵院(じぞういん)
塔頭寺院。庭から見える錦雲渓の渓谷は見事。
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廣田先生之碑(ひろたせんせいのひ)
近代の教育者である広田虎之助(1866‐1917)の碑。
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休憩所(きゅうけいじょ)
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売店(ばいてん)
かわらけ投げで使う素焼きの皿を販売している。2枚で100円。
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かわらけ投げ
地蔵院前にある展望広場から、谷に向けて素焼きの皿(円盤)を投げることで厄除けのご利益があるという。神護寺はこのかわらけ投げの発祥の地といわれている。
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錦雲渓(きんうんけい)
かわらけ投げはここに向かって円盤を投げる。紅葉の時期には何色もの紅葉で彩られた絶景が楽しめる。
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トイレ(WC)