京都府京都市中京区烏丸通御池上ル、烏丸通と御池通の交差する「烏丸御池」交差点のやや北にある、元龍池小学校の旧校舎を利用して開館した、日本最初にして最大の総合的な漫画博物館。
愛称は「えむえむ」、オリジナルマスコットは「マンガ」「ミュージアム」のそれぞれの頭文字を取って名付けられた「マニュー」、公式PRガールは「地下鉄に 乗るっ」×「マンガミュージアムへ行くっ」から抜擢された「烏丸ミユ」。
京都では1872年(明治5年)に明治政府が正式に学校制度を定めた「学制公布」よりも前の1869年(明治2年)、全国に先駆けて日本で最初の学区制小学校である「番組小学校」が64校作られました。
そしてこれを主導したのは行政ではなく町衆であったといい、明治初期に民間で学校を開校した例は他の地域にはないといいます。
幕末の動乱による戦禍や、明治維新による天皇の東京行幸によって衰退の危機にあった京都を復興するため、都市基盤の整備や勧業政策など様々な近代化政策が実施されましたが、中でもとりわけ重要と考えられたのが教育で、「まちづくりは人づくりから」の信念の下、京都を立て直すため産業を支える良い人材を育てることが急務と考えた町衆たちは自らお金を集め、足りない分は借金をしてまで小学校を建設し、地域ぐるみで管理・運営までを行ったといいます。
「龍池小学校」は1869年(明治2年)11月、京都に64校ある「番組小学校」と称された小学校の一つ「上京第二十五番組小学校」として開校。
龍池学区は北は二条通、南は三条通、東は烏丸通、西は新町通に囲まれた区域で、地名の由来は鎌倉時代に栄えた二条関白邸「二条殿」にあった「龍躍池(たつやくいけ)」にちなんで「龍池町」と命名されたことによるものだといいます。
かつて周辺の子どもたちが数多く通っていましたが、人口のドーナツ化現象や少子化などによって昭和30年代には800人を超えた生徒数が、1994年(平成6年)には110人ほどまでに減少してきたため、1995年(平成7年)4月、周辺の梅屋・竹間・富有・春日の4つの小学校と統合する形で「御所南小学校」が開校し、龍池小学校は1997年(平成9年)3月に126年の長い歴史に幕を閉じ閉校となります。
その後、龍池小学校跡地の利用について検討が進められる中で、2003年(平成15年)4月に、京都精華大学から京都市に対しマンガミュージアム構想について提案がなされ、同年12月に構想について基本合意がなされ、2006年(平成18年)11月25日、元龍池小学校の旧校舎を改築、一部増築する形で「京都国際マンガミュージアム」として開館されるに至りました。
京都精華大学では1973年度の美術科マンガクラス開設を皮切りに、2000年度の芸術学部マンガ学科開設、2001年度の表現研究機構マンガ文化研究所開設、その後も2006年度のマンガ学部開設と、30年にわたってマンガ文化に関する教育・研究を蓄積し、国内外の学問としてのマンガ研究をリードしてきた存在であったことから、京都市とマンガ学部を持つ京都精華大学の共同事業として整備が進められたもので、現在も市と大学で組織される運営委員会の下で京都精華大学が管理・運営しているといいます。
建物は1929年(昭和4年)に建築された「本館」と1937年(昭和12年)建築の「北館」、そして1928年(昭和13年)に建築の「講堂・体育館」の3つの建物をつなげる形でリノベーションされ、それ以外はほとんど手を加えず、モダニズム時代の美しく贅沢な建築の雰囲気を味わえるようになっているといい、旧龍池小学校の建物のうち本館・講堂・北校舎・正門および塀だった建物が2008年(平成20年)7月23日に国の登録有形文化財に登録されています。
博物館と図書館の機能を併せ持った日本初の総合的な漫画博物館で、 国内外の漫画本や雑誌、アニメーション関連資料などの収集・保管・展示や漫画文化の調査研究のほか、図書館的機能も併せ持ち、約30万点の蔵書のうち5万冊の漫画本を館内で自由に閲覧することが可能となっていて、マンガを活用した新たな生涯学習拠点として人々が集い、賑わいをもたらす新たな観光スポットとして注目を集めています。
一般公開のギャラリーゾーン、研究ゾーン、資料収蔵ゾーン、地域利便施設によって構成され、常設展示をはじめ、企画展示や龍池歴史記念室の他、マンガやアニメに関するグッズが購入できるミュージアムショップ、喫茶などを併設。
中でも総延長200mの書架に5万冊が並ぶ「マンガ本の壁」は同館の顔ともいえる存在であり、また屋外の芝生にマンガを持ち出して読むことも可能で、烏丸通沿いからも芝生広場でマンガを楽しむ利用者の姿をよく目にすることができます。
その他にも土日祝を中心にワークショップや紙芝居パフォーマンス、似顔絵作家と楽しく会話しながら似顔絵を描いてもらえる「ニガオエコーナー」、漫画の制作工程を紹介する実演イベント「マンガ工房」なども随時開催されています。
その一方で現在も龍池学区の学区民の交流の場としても重要な役割を果たしていて、「学区民体育祭」や自治連合会とマンガミュージアム共催の「龍池えむえむ夏祭り(2016年から「龍池ゆかた祭り」)」などが開催されています。