紫陽花とは?
美しい紫色の花が憂鬱な梅雨の時期に彩りを添える
DATA
学名は「Hydrangea Macrophylla」、英名は「Hydrangea(ハイドレインジャ・ハイドランジア)」、「七変化(しちへんげ)」「四葩(よひら)」などの別名あり。
アジサイ科(ユキノシタ科)アジサイ属の落葉低木。
初夏のちょうど梅雨の時期と重なる6月上~7月中旬にかけ、小花を球状に群がるように咲く、ただし色がつき花びらのように見えるのは萼(がく)で花はその中にある小さな点状のもの。
色は青紫色や赤紫色を中心にピンクや白色など様々に変化し、その様子から「七変化」とか「八仙花」の別名。
色の違いは土が酸性(青っぽくなる)かアルカリ性(赤っぽくなる)かによって変化するとか、遺伝的に決まっているのだとか諸説あるが、科学的には土壌の酸性度に加えアルミニウムイオンの量や開花からの日数など、複数の要因が重なって色が変わる。
日本原産で、基本種は以下の3種類。
「ガクアジサイ(額紫陽花)(ハマアジサイ)」
伊豆半島や伊豆諸島、神奈川県の三浦半島や千葉県の房総半島などの関東地方の海岸に近い山地に自生
「ヤマアジサイ(山紫陽花)」
福島県以西の本州や四国・九州に分布
「エゾアジサイ(蝦夷紫陽花)」
北海道と本州北部及び本州の日本海側に自生
このうちガクアジサイを元に日本やヨーロッパ、アメリカなどで多くの品種が作り出されている。
高さは1~2m、大きいもので4mになるものも。
名前の由来
「アジサイ」の名前の由来は古くは「あづさい(集真藍)」、すなわち青い小花が集まって咲く様子から来ているといわれる。
また漢名の「紫陽花」は元々は唐の詩人・白居易が別の花に付けた名で、平安期の学者・源順がアジサイにこの漢字を充てたものが誤って広まったものといわれている(中国では「八仙花」「綉球花」)。
古くは「安治佐為」「味狭藍」「安豆佐為」「安知佐井」「止毛久佐」などの漢字が充てられていたことも。
学名・英名の「hydro」はギリシャ語で「水の」、「angeion」は「容器」という意味で、大量の水を吸収する性質が水がめに例えられた。
色について
アジサイの色はアントシアニンという色素によるもので、アントシアニンが多いほど青く少ないほど赤くなるが、土壌が酸性の場合アルミニウムのイオンと多く結合するため青く、中性やアルカリ性の場合はアルミニウムが溶け出さないので赤くなる。
このため花を青色にしたい場合は酸性の肥料を使ったりアルミニウムを含むミョウバンを与えれば可能だが、品種によっては遺伝的な要素で花が青色にならない場合もあり、また日が経つと老化に伴って有機酸が蓄積され土壌の状態とは関係なく青色の花が赤味を帯びるようになることもある。
種類
広義の「アジサイ」
広義の「アジサイ」はアジサイ属に属するものすべてを指し、このうち日本原産の「ガクアジサイ(額紫陽花)(ハマアジサイ)」を元に日本や世界で品種改良が行われ、アジアや北アメリカに約40種類、日本に約10数種が存在するといわれている。
狭義の「アジサイ」(ホンアジサイ)
ガクアジサイの変種の一つで花序が球形ですべて装飾花となったもの、ガクアジサイの「額咲き」に対しその形から「手まり咲き」と呼ばれる。日本固有のものとしては「ヒメアジサイ(姫紫陽花)」など。
このうちヨーロッパへと持ち込まれて改良が進み、大正時代に日本に逆輸入されたものは「セイヨウアジサイ(西洋紫陽花)」とか「ハイドランジア」とも呼ばれ、日本でアジサイが人気が出るようになったのもこの品種が登場してから。
そのため現在「アジサイ」といえばこの「ホンアジサイ」の方が一般的である。
歴史
奈良時代の770年頃に成立した「万葉集」にも2首その名が登場しており、鑑賞用として古くから日本人に親しまれてきた。
ただし当初のアジサイはいわゆるガクアジサイで花としては地味で素朴。江戸時代には品種改良が進み現在一般的な「手まり」の形をした園芸品種もたくさん生まれたが、元々は「七変化」と呼ばれるほど色がよく変わることが心変わりや変節、裏切りをイメージさせることから今ほどの人気はなかったという。
現在のように人気を博するようになったのは「西洋あじさい(ハイドランジア)」が登場してからのことで、幕末から明治にかけ長崎オランダ商館の医師として来日し西洋医学を根付かせたことで知られるシーボルトの紹介でヨーロッパに持ち込まれると、小型の鉢や見た目も派手なものに品種改良されて日本に逆輸入、人気を集めたのだという。
利用・用途
観賞用
現在も鬱蒼とした梅雨の時期を明るくしてくれるこの時期の風物詩として、庭園や公園などに植栽されたり鉢植えにされたりして人気が高く、また近年境内にたくさんのアジサイを植栽し「あじさい寺」と呼ばれ観光名所となっている寺院も多い。
ちなみに全国に先駆けてあじさい寺として有名になったのは鎌倉の「明月院」で、第二次世界大戦後の人手不足から手入れに手間のかからないアジサイを植えたのがはじまりといわれ、その歴史は実は意外と新しい。
薬用
アジサイの花を日干しにして乾燥させたものは「紫陽花(しようか)」という生薬となり、解熱の効果が期待できるが、その一方でアジサイの葉やつぼみ、根などには毒性があり、嘔吐、吐気、めまい、顔面紅潮などを起こす危険があるので注意が必要。
よく似た植物
「ヤマアジサイ(山紫陽花)」
山林に自生し花はガクアジサイよりやや小ぶり、「シチダンカ」や珍しいものでは花が黄緑色の「土佐緑風」なども。
「アメリカノリノキ」
北米原産、園芸品種の「アナベル」は手まり状に白い花を咲かせる珍種。
「ノリウツギ」
日本全国に自生、名は樹皮のネバネバが和紙のつなぎの糊となったことから、樹高は2~5mと高く、花色は白でピラミッドのような円錐状の花穂が特徴、代表的品種は「ミナヅキ」。
「カシワバアジサイ(柏葉紫陽花)」
名は葉がカシワ(柏)に似ているため、北米原産、花色は白で円錐状。
「タマアジサイ」
本州中部に自生、名はつぼみが玉のように見えるため、日本に自生。
「ツルアジサイ(蔓紫陽花)」
日本全国に自生、つる性のアジサイで花は白色。
「コアジサイ(小紫陽花)」
シバアジサイ(柴紫陽花)の別名、日本原産で関東以西の林間に自生、花は小さな粒々が集まったように見える。